佐藤康宏「世界の中心で、六甲颪を叫ぶ」『UP』443、2009、pp.18-19
極めていい加減な中日ファンが阪神ファンの言説を引用するという感じにはなるが;
みんな「猫のような虎ばかり」(ibid.)。それから、稀な例として、「獣の獰猛さを示す虎」として、法隆寺の「玉虫厨子」の「捨身飼虎図」が挙げられる(p.19)。
かつげる縁起はすべてかつぐ。阪神タイガースのためならば。四〇年近い応援の日々の大半は負け試合とともにあった。敗戦の翌日は黒い下着と靴下をつけ、黒服を着て喪に服し、勉学や仕事は上の空で、愛する者を失った喪失感に耐えつつ再生を祈る(そんな日はそっとしておいてほしい)。通勤経路や飲食物の選択、試合中の姿勢その他、生活のすべては勝率の高い方へと賭けられる。そんなことをしても蝶の羽ばたきほどにも世界に影響を与えないのは承知の上で、そうせずにはおられない。事は信仰の領域に属する。
それでも中日と優勝を争っていた二〇〇五年、執筆中の書物の中で「いかにも弱そうなドラゴン」というキャプションを若冲の「雨龍図」につけたら、ドラゴンズを退けることができた。言霊というのはやはりあるのではないか。不振を極めてきた今年、もっと早くここ*1で猛虎の画を論じて勢いをつけるべきだったかもしれない。だが、日本の絵画には猛虎と呼べる例がほとんど存在しない。(p.18)
ところで、天皇賛美の歌である「君が代」が現代日本の国歌として不適切なのは自明だが、歌詞を問わないにしても、あの陰気な曲がスポーツなどの国際大会で流れると心が沈む。ああいう場には絶対に「六甲颪」の方がふさわしいと思いませんか。(ibid.)
クドカンのTVドラマとは関係ない。
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*1:連載『日本美術史不案内』。