250周年

The Theory of Moral Sentiments

The Theory of Moral Sentiments

薜涌「“看不見的手”是“血淋淋的”」『上海書評』2009年6月14日、p.7


今年はアダム・スミスの『道徳情操論』出版250周年で、ペンギン・ブックスではアマルティア・センの序文を付した250周年記念ヴァージョンを刊行したことを知る。上の記事は主にそのセンの序文を紹介したもの。
そこで言及されている2冊のアダム・スミス関係の本をマークしておく;


Gertrude Himmelfarb The Road to Modernity: The British, French, and American Enlightenments, 2004
Emma Rothschild Economic Sentiments: Adam Smith, Condorcet, and the Enlightenment, 2001


Gertrude Himmelfarbは英国啓蒙思想の場合、仏蘭西啓蒙流の「理性」に加えて「美徳(virtue)」が重要であり、アダム・スミスもその文脈で解釈しなければならないという。
Emma Rothschildによれば、スミスの全著作において「看不見的手」(invisible hand)というのは3回しか出現しておらず、当時の用法において、invisible handというのは「一種対人類有毀滅性的、可怕的、不可知的力量」を意味していた。例えば、父を殺し母を犯したオイディプスはinvisible handに支配されていた。つまり、「見えざる手」は「血まみれ(血淋淋的)」。
もうひとつ、「血まみれ」の「見えざる手」から喚起されるのは、ミルトン・フリードマン*1とチリの911との関係だろう*2

*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061117/1163727859 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080714/1216049328

*2:チリにおけるピノチェトのクーデタとその後については、北島「智利筆記」(in 『青燈』、pp.81-100)も参照のこと。See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090615/1244995286 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080320/1206009026