動機はわからぬが

承前*1

『読売』の記事;


中大教授刺殺、山本容疑者「2、3か月前に殺意」
 中央大理工学部教授の高窪統(はじめ)さん(当時45歳)殺害事件で、逮捕された教え子の山本竜太容疑者(28)が警視庁の調べに対し、「2、3か月前には高窪さんへの強い殺意を抱くようになった」と供述していることがわかった。


 同庁幹部が明らかにした。事前に大学まで出向き、高窪さんの授業の時間割を確認したとも話しているという。同庁の捜査では、山本容疑者は大学時代、高窪さんに心を開いている様子だったことが判明しており、同庁は、殺意を抱いた時期に何があったのかさらに取り調べを続ける。

 同庁幹部によると、高窪さんは、昨年度の後期最終授業だった1月14日の2限目直前に襲われ、山本容疑者はその4日前に勤務先のホームセンターに休暇届を出していた。このため同庁が、どの段階で襲撃を思い立ったのか問いただしたところ、山本容疑者は「昨年10月か11月頃には強い殺意を持っていた」と供述。さらに「殺意を抱いた後に大学を訪れた」「高窪さんの授業日程や時間割も知っていた」と話し、手製の凶器の部品に使った大型の枝切りはさみの購入時期については、「10月か11月頃」と具体的に説明したという。

 捜査関係者によると、大学時代の同級生たちは、山本容疑者のことを「変わった学生」「思いこみが激しい」などと説明しており、付き合いはほとんどなかったという。しかし、留年後、2003年4月に入った高窪さんの電気電子情報通信工学科の研究室では、親切に卒論指導をする高窪さんに心を開いていた様子だったという。

 山本容疑者は昨年5月、高窪さんに面会を要請していた。同6月に卒業証明書を受け取りに大学に出向くなど、就職活動を始めていたとみられる。同庁は、信頼を寄せていた高窪さんに殺意を抱くようになった経緯とともに、面会を要請した後、2人に具体的な接点がなかったか調べている。

 ◆バイト月収は5、6万円◆

 「趣味は自宅でヒーリングミュージックを聞くこと」――。山本竜太容疑者は21日の逮捕後、取調官に休日の過ごし方を聞かれた際、そう答えたという。ホームセンターでのアルバイトの収入は月5、6万円程度。生活費はそれで賄っており、借金はなく、逆に数十万円の預金があったことも確認されている。

 山本容疑者が親元を離れ、かつて祖父母が暮らしていた神奈川県平塚市の一軒家に引っ越したのは2007年夏。取調官には「親から離れて生活したいと思った」と話したという。

 都内の電子機器関連会社によると、その年の春、試用期間中の山本容疑者が本採用になる直前、「仕事が難しいから辞めたい」と辞表を提出。その後、母親から会社に「仕事を続けさせてほしい」と電話があり、母親に説得された本人も辞表を撤回したが、撤回は認められなかった。

(2009年5月25日03時04分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090525-OYT1T00024.htm

まだ動機は不明ということなのだろう。ただ以前

(前略)私たちの振る舞いには特定の対象に向けられたものと不特定の対象に向けられたものがある。例えば、私信は前者であり、blogへのエントリーなど公刊されるものは後者といえる。ただ、実際のところ、その区分は曖昧。だから、振る舞った者の意図というか意味づけとその振る舞いを知覚してしまった者の解釈とが食い違ってしまうということも日常茶飯事としてあるのだろう。

俗にストーカーといわれることの或るものはこの意図の取り違えに発していると思われる。特に藝能人(スポーツ選手や作家も含む)や政治家や医療関係者やセックス・ワーカーがストーカーされるという場合。藝能人や政治家の場合、愛想を振りまいても、それはファン一般とか有権者一般に対してであって、特定のあなたに向けられたものではない。また、医療関係者やセックス・ワーカーはたしかにあなた個人に関わる。しかし、その時、あなたはクライアントという一般者の中のひとりに過ぎない。それをほかでもないあなた自身に向けられたものだと、あなたが解釈(誤解)したときが、ストーカーという出来事の発端となるのであろう。(後略)
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070125/1169693531

と書いたのを再掲しておく。また、「ストーカー」に関しては、自らがストーカーされた経験も含む福島章『ストーカーの心理学』をマークしておく。
ストーカーの心理学 (PHP新書)

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