ジュリア・クリステヴァは自分がドゥンス・スコトゥス主義者であると述べた*1。そこで、坂部恵『〈ふるまい〉の詩学』の最後に近い部分からメモ;
引用文の中に出てくる〈あわい〉とか〈うつつ〉といった言葉たちに関しては、坂部氏の著書を直接見ていただくしかないだろう。ところで、ドゥンス・スコトゥス、Duns Scotusって、スコットランドのDunsさんという意味なので、ただスコトゥスという表記はちょっと違和感は感じる。
パースが、オッカムの唯名論を断固しりぞけ、イギリス経験論このかたの伝統にあえて逆らってまで、スコトゥスの実在論に積極的に与したのは、〈ふるまい〉と深くかかわる未来の予見に関する一般観念が、とりわけ、実在の〈あわい〉に〈ふれ〉、そこに根ざすことを確信したからだった。
スコトゥスがアヴィケンナを承けて、個物をして当の個物たらしめる形相、「このもの性」(haecceitas)をあえて主張したのは、〈うつつごころ〉による自己同定と他者同定が、事物の究極との〈ふれ〉の〈あわい〉に深く根ざし、〈うつつ〉と〈ゆめ〉にあいわたりつつ、各個体のことばに尽くせぬ独自性を見て取ることを確信した故にほかならない。
スコトゥスの実在論は、intellectus agens(能動知性)の概念がまさに哲学史の舞台から姿を消そうとする寸前に、いいかえれば、(カントによる)知性(悟性、intellectus)と理性(ratio)の序列の逆転へ向けての地盤が、(オッカムによって)まさに整えられんとする寸前に、ギリシア以来のnous-intellectus概念の、落日の最後の輝きとしてあらわれた想念にほかならなかった。(p.141)
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*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090306/1236324369
*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070508/1178597841
*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090217/1234840899 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090219/1235062130
*4:http://d.hatena.ne.jp/oda-makoto/20090302/1236018531
*5:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070508/1178602180 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070807/1186490802 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081209/1228839200 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090224/1235449886