新田義弘 on Levinas(メモ)

哲学の歴史 (講談社現代新書)

哲学の歴史 (講談社現代新書)

ほかの本を取り出そうとして、本棚から新田義弘先生の『哲学の歴史』を一緒に取り出して、ついつい頁を捲ってしまう。
そこから、レヴィナスに対する批判的コメントをメモ;


(前略)しかしそれにしても他者の根源的な与えられ方は、非対称的であるというレヴィナスの指摘は傾聴にあたいする。他者の他者性というものは、たしかに〈われわれ〉性とはそのまま同一のことではない。むしろ他者性とは〈われわれ〉性を成立させている契機なのである。ただレヴィナスのように、他者を絶対的な外部にみることが適切かどうか、むしろ他者の他者性は、内部と外部をわかつ原理のなかに走る亀裂そのものといえはしないであろうか。わかりやすくいえば、すでに世界が世界として開かれることそのことが他者の他者性によって可能となるのであり、他者はけっして外部でも内部でもないのである。構造的同一性そのもののなかに巣食っている亀裂が他者の他者性になるのではなかろうか。(p.170)