承前*1
ボリス・アクーニン、亀山郁夫「グローバル化時代に読むドストエフスキー」『毎日新聞』2008年11月23日
アクニーン氏曰く、
これを承けて、亀山氏曰く、
日本人とロシア人の共通性でも、[ドストエフスキー]ブームを説明できると思います。ドストエフスキーはロシアの心を象徴する作家とされますが、日本人にも近いものがある。ドストエフスキーの小説では、自殺者や殺人者が、時折、ヒーローのように描かれます。罪を犯した後、人間的に成長する人物もいる。
また、亀山氏は
ロシア日本は極めて自殺が多い。2002年の統計で、自殺率はロシアが主要国中1位、日本は3位。
両国の精神的な共通性は、何にせよ、「とことんまでしないと気が済まない」ことでしょう。とことんできずに自殺し、とことんやったが故に自殺する。ロシアに「ケノーシス」という概念がありますね。イエス・キリストは屈従そのものを身にまとい、奴隷の姿でこの世に姿を現したとの考え方です。ある友人に「ケノーシスの精神は、カミカゼの精神と根本で似ている」と聞きました。自己犠牲の精神です。
とともいう。
日本人は、携帯電話に見られるように、繊細を極めた技術力を持っています。その繊細な技術力が、逆に、彼らの繊細な魂を破壊しつつある気がします。その日本人の心がドストエフスキー、しかも『カラマーゾフの兄弟』を発見したというのは極めて予言的です。数ある彼の作品で、明らかに「救済」がテーマとなっているのは、これだけですから。
これらについてのコメントは保留。
露西亜精神ということでは、Lesley ChanberlainのThe Philosophy Steamer*2と井筒俊彦先生の『ロシア的人間』をマークしておく。
The Philosophy Steamer: Lenin and the Exile of the Intelligensia
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- 作者: 井筒俊彦
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