武勇談か

承前*1


万引きの目的は、一にカネ、二に度胸試し、ぐらいの感じじゃないでしょうか。むしろ一と二は逆転するかも。

カネは、アルバイトといっても小中学生では新聞配達ぐらいに限られるし、手っ取り早く……と。

度胸試しというのは結構あるんじゃないでしょうか。僕が通っていた小中学校は程良く荒れていましたが、そこでは「あそこの店は監視が厳しいから、やりがいがある」「へー、オマエ、あの店からパクってきたのかよ!すげー」みたいな会話が普通にされていた記憶があります。もう二十数年も前ですが。
http://d.hatena.ne.jp/sean97/20080425/p2

戦争や狩猟などのリスクの高い活動に参加する動機として、勿論共同体の義務や功利的目的(狩猟の場合であれば食料の確保)があるのだろうが、それとともに(或いはそれ以上に)〈男〉としての名を上げるということがあるだろう。言い換えれば、武勇談のネタにするためということになる。上に引いた例のように、武勇談にはそれを聴く集団、それを聴いて「すげー」と頷いてくれる集団を必要とする。小中学生のホモソーシャルな集団では、武勇談のネタというのはどうしても喧嘩関係か「万引き」関係に限定されるわけだな。中坊になれば女関係の武勇談というのも出てくるだろうけど、小学生ではまだちょっと早いか。
あと興味を持ったのは武勇談の舞台となった店のロケーション。小中学生の場合、学区というものの意味というのはかなり重要である。勿論、子どもだけでなく(子どもを持つ)大人にとっても学区はそれなりに重要な意味を持っているわけで、学区の地域共同体としての意味を論じた教育社会学や地域社会学の業績はかなり蓄積されているのではないかと思う。学区の内か外かによって、教師とか親といった大人たちの対応もかなり違っていた可能性もあったのではないかと思ったのだ。
そういえば、恩師のH先生は宮城県の出身だが、先生の話によれば、宮城の農村部では秋になって刈り入れて外に干してある稲束が夜のうちに何者かに盗まれるということがちょくちょくあるという。先生は、隣のムラの稲をかっぱらうことがゲームとして行なわれているんじゃないかと推測していたが、こうしたムラ同士の対抗関係について調べている人はいるのだろうか。