見合って見合ってからゴダールにおける音楽

承前*1

これもmutual tuning-inに関連するかと思い、「ミズラモグラ」さんの


われわれはふだん自分が何事かに一心不乱にのめり込んでいる姿を人前ではなかなかみせないものだ。他方、スポーツ中継の面白さの一つは、画面を通してそうして没入する姿が人前にさらされてしまうところにある。なかでも面白いのは囲碁や将棋の中継だ。ふつうのスポーツの場合、この没入は競争相手とのあいだに生まれてくるという意味において、見る側もその志向対象を共有しやすい。ゴールをめざすにしろ、ボールを投げるにしろ、互いの動きを介して駆け引きがおこなわれる。たとえば、とりわけ番付上位での相撲の取り組みの楽しみは、土俵にあがった力士が立ち会うまでに互いのテンションを高めていくところにあり、それが立ち会いで一気にはき出されてくるその緊張感がたまらない。

 でも、囲碁や将棋の場合、互いの外的な動きはもっと間接的にしか結びついてこない。相手がある手を打ったからといって即座に反応しなければならないわけではないし(持ち時間を使い切れば別だが)、相手がどんな手を打つかはかなりの程度読みきっているはずだ。そして、相手が上手い手を打ってくれば、直接それに反応するというよりは、以降の手筋を考えるためにますます自分の内側に引きこもっていくことになる。ときには、解説者の方まで明らかに入りこんでいることが分かったりして、こうなるとかなり面白いことになる。だって、みんな心ここにあらずという感じでテレビに映っているのだから。
http://d.hatena.ne.jp/Talpidae/20080222/p1

という一節をクリップしておく。
これを読んで、ジャン=リュック・ゴダールの映画における(永遠に続くリハーサルのような)音楽の演奏というのを不図思い出す。並べてみると、『ワン・プラス・ワン』におけるローリング・ストーンズの”Sympathy for the Devil”、『カルメンという名の女』におけるベートーヴェン弦楽四重奏、『右側に気をつけろ』におけるリタ・ミツコ。
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