Celan/Gogh

承前*1

空腹の技法 (新潮文庫)

空腹の技法 (新潮文庫)

ポール・オースター「流刑の詩」(in 『空腹の技法』)からのメモ。

ツェランはその生涯においても、芸術に対する姿勢においても、ゴッホと大きく重なりあう。ゴッホが絵の具を使ったのと同じようなやり方で、ツェランは言語を使ったと言える。二人の作風はその精神において驚くほど似ている。ゴッホの筆づかいも、ツェランの構文も、厳密な意味で写実的ではない。なぜなら、両者それぞれの目のなかで、「客観的」世界はそれを見る詩人/画家の認識と分かちがたく結びついているからだ。現実に入っていこうとする努力なしには、現実というものも措定できない。進行中のプロセスとしての芸術作品は、現実に入っていきたいと欲するこの欲望の証人にほかならない。ゴッホの描いた事物が、「現実と同じくらいリアルな」具体性を得るように、ツェランは言葉を、あたかもそれらが事物と同じ密度を有しているかのように扱う。言葉が単に世界の鏡ではなく、世界の一部、彼の世界の一部となるのを可能にするような実質性を、ツェランは言葉に与えるのだ。(p.124)
なお、この2人は「フランスに住む外国人として自殺した」(p.125)という共通性を持つ。