承前*1
- 作者: 松本清張
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松本清張の『点と線』はたしか最初日本交通公社(JTB)発行の雑誌『旅』に連載されたのではないかと思う。この小説は人々の〈旅行〉への欲望を喚起する役割を果たしたのだろうし、何よりも当時既に観光旅行というハビトゥスが復活していたことになる。
さて、『点と線』で重要なのは、タイトルが示しているように、列車のダイアグラムである。勿論、「点と線」というのは国鉄職員(プロ)が使うダイアグラムであるが、他方一般人が読む時刻表も重要な役割を果たしている。安田辰郎(柳葉敏郎)の妻は病床にあり、時刻表を見ながら、〈脳内旅行〉をすることを娯しみとしている。時刻表には、駅名と列車名と時間が書いてある。彼女はそこから、同じ時刻に日本の様々な駅で同じ時刻に様々な列車が到着したり・出発したりしている情景を想像する。彼女は自室にいながら、時刻表という書物と国鉄のネットワークを通して、〈日本〉というネーションを想像していることになる。Skeltia_vergberさんが『点と線』を「東京という都市の出来事」と書いていたので、これは〈日本〉というネーションを想像する物語だと言ってみようと思った。
そういえば、昔知人と東京とは何かというような話をしていて、結局TBS(東京放送)の電波が届く範囲だという感じになったことがあったのだが、これはどうなのだろうか。