『ミャンマーの柳生一族』

散歩の途中で、(ブックオフのようなメジャーなチェーン店ではない)所謂新古書店による。そこはブックオフのように膨大な105円均一の棚があるわけでもなく、つまり消費者にとってはあまり魅力的ではなかったのだが、高野秀行ミャンマーの柳生一族』(集英社文庫、2006)を立ち読みし始めて、面白くて40頁くらい読んでしまい、このまま全部立ち読みで済ませるというのも、あまり流行っていなさそうなこの店の人に悪いなと思って、値段も200円くらいだったので、買い求め、近くのエクセリシオールで全部読んでしまった。高野秀行という人の本はこれまで読んだことがなかった。これは著者と作家の船戸与一が2004年の緬甸を旅行した紀行。「柳生一族」とは緬甸の軍情報部。緬甸を江戸幕府に喩える。この比喩が妥当なのかどうかは分からぬ。ただ、面白いことはたしかだ。
著者は


私はミャンマーへは二年に1回くらいの割合で行っているが、最後に合法入国したのは一九九四年、それ以降はすべて非合法である。
タイから入ってタイへ戻ったのが二度、中国から入ってタイから出たのが一度、中国から入ってインドに抜けたのが一度、非合法にミャンマー国境を越えたことが実に八回、さらに未遂(国境の検問で捕まり追い返された)を加えれば都合十一回。(p.13)
という人である。さらに、「ワ族」の支配地域(「ワ藩」)に潜入して書いた本(cf. pp.113-117)は、「柳生一族の重要参考文献」にもなっている(pp.212ff.)。そのような人である。しかし、今回の旅行は監視役の「柳生一族」と一緒の旅。そのどたばたは面白いということは言うまでもない。その中から浮かび上がってくる緬甸人の心性はすごく興味深いが、これについては後日また言及するかも知れない。それ以外で面白かったのは、先ずマンダレーにおける宗教事情を記している部分(pp.152-155)。 緬甸におけるムスリム雲南からやってきた回族だということは初めて知った。それに対して、カトリック教徒は客家系の華人である。また、中国との国境の町「ムセー」の描写も興味深い(pp.125-131)。それから、 緬甸が「読書大国」であるという指摘(p.192ff.)も吃驚。国連に「最貧国」指定を申請したときに、その識字率の高さにクレイムがついたそうな。
ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)

ミャンマーの柳生一族 (集英社文庫)