田壮壮監督の『呉清源』は、日本では17日から公開か。
実は既にDVDで観てしまっている。
この映画は字幕が多い。歴史的な事実の説明は全て字幕に委ねてしまっているかのようだ。では、何を描くのか。その答えにかなりぴったりの言葉を見つけた。遠海安という人の言葉−−「呉清源が生きた時代、呉清源がまとった空気を、ひと巻きの絵巻のように、淡々と静かに描き出す」*1。この映画のポイントはずばりWang Yuによる映像であろう。その陰翳やアングル。室内の場面では(例えば)小津安二郎の諸作品、或いは小津の影響を受けたヴィム・ヴェンダースの諸作品を連想するのは容易だろう。小津がカラーで撮ったら、こうなるのか。しかし、さらに印象的なのは野外の場面。特に、戦後「璽宇」教団の人々が海岸を放浪するシーン。この数分間は、風の痛さや寒さが伝わってくる程なのだが、ここからテオ・アンゲロプロスのギリシアの風景を連想してしまうのは私だけだろうか。
張震が演じる呉清源が体現するのは、中国と日本の狭間に生きるとというマージナル性のためもあるのだろうが、1人の孤独で、超越性を強烈に希求する男である。張震を初めて観たのは、王家衛の『ブエノスアイレス』で、その次には李安の『グリーン・デスティニー』だが、今回観て、その成熟ぶりに吃驚。
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