知への愛の問題

http://web-teacher.jp/
http://report.rakugan.com/


http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20070131/p2http://takayak.moe-nifty.com/episode2/2007/01/post_9440.htmlにて知る。但し、不図思い出して、拙blogを検索してみたら、一昨年の12月に桑江さんのblog*1のURLをマークするという仕方で、この問題には目をつけていたことになる*2
この件に関して、特に川瀬さんはかんかんにお怒りになっている。大学の先生の立場としては当然であろう。
http://web-teacher.jp/wt-rule.htmlによると、「卒論の雛形」*3のほかに、「卒論雛形の内容理解をサポートする資料(A4一枚程度で背景や目的などを箇条書きにしたもの)」もつけてくれるという。これは口頭試問対策か。私自身の感覚だと、自分が書いていないものに署名して、さらに口頭試問に臨むというのはちょっと堪えられない気がする。ばれるんじゃないかというプレッシャーは相当のものだ*4。ただ、どこの国でも、大企業の社長とか政治家のスピーチというのは自分で書くのではなく、官僚とかプロのスピーチ・ライターが書くのが普通だろう。つまり、これらの人々は他人の言葉を自分の言葉として自ら読み上げ、さらに政敵やメディアの質問に耐え、その結果として起こる社会的な論争も引き受けなければならない。他人の言葉を抱えて卒論の口頭試問に臨むというのは、将来政治家になりたい人とかにとっては予行演習ということになるのか。
川瀬さん曰く、


でも、やはり一番腹を立てているのは、恐らくこのサイトの利用者に対してではなく、運営者に対してです。お前さんたちは恐らく高学歴なんだろうが(見知らぬ学生の代行ができるくらいだから、そこそこお利口さんなんでしょう)、ゴミクズだよ(人間性も書いたレポートも)。お前さんたちは、自分たちの行為で自分が出た大学のことも冒涜しているんだぜ。こういうくだらないことをこなせるようになるために、高学歴になったとでも言うのか?高学歴者は、難関校に入ったことが偉いんじゃなくて、出てから大層な仕事をするであろうということで世間様から甘やかされているわけだろうが。それが判っているのか?もし、「このようにして、レポートや卒論を無価値にすることが、俺たちの大学に対しての復讐なのだ」なんていう高尚なこと(あくまで皮肉だよ)を考えているんなら、話は別だが。
先のサイトを見ると、大学院生のアルバイトのようではある。先日、内田樹氏の或るテクスト*5が面白いと思ってそれに言及した*6。但し、そういうのって決して主流ではないだろうし、ここ数十年かの傾向に対するマイナーなバックラッシュにすぎないのだろう。その傾向とは学歴とか学問を短絡的に経済価値に換算しようとする傾向である。或いは、〈世の中〉(って誰だよ)の役に立ってなんぼという発想。そういう中で、アカデミズムの権威がそれ自体として肯定されるわけではない。それと同時に、知への愛とか知の悦びといったものもお呼びじゃなくなってくる。ここ数年来の世代バッシングに与するつもりは毛頭ないが、団塊の世代はアカデミズムの権威をぶっ壊した。中には〈学歴社会〉そのものからドロップ・アウトした人もいるけれど、団塊の世代は学歴による利益だけはしっかりと享受した。それ以降の世代にとって、大学の意味というのは功利的な意味しか残っていないと元全共闘で名古屋の方で予備校の先生をしている牧野剛という人がいっていた。こういう業者のサイトを見て感じるのは、そういう(或る意味では荒涼とした)アカデミズム観だ。
なお、この件に関しては、辻大介氏のテクスト*7も共感するところが多かった。

*1:http://blog.livedoor.jp/skeltia_vergber/archives/50115381.html

*2:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20051215

*3:「雛形」ということは「お客様」ご自身が最終的には仕上げて下さいということか。

*4:私たちが卒論を書いた時代ならいざ知らず、現在でも通用するのかという疑問もある。教科レポートならともかく、現在では昔とはくらべ物にならないくらいの、きめ細かいというか殆ど手取り足取りの論文指導が多くなっているように感じるからだ。ゼミに全然出てこないような奴が立派な卒論を出したということになると、どんな先生だって怪しむでしょ。

*5:http://blog.tatsuru.com/2007/01/22_1017.php

*6:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070130/1170131794

*7:http://d.hatena.ne.jp/dice-x/20070131#p1