先ず
http://loud-minority.cocolog-nifty.com/loud_minority/2007/01/post_ad1e.html
「図書館の中の人は出版不況怖くないんですか?」と題して、「出口の見えない出版不況の中で、著者、出版社、取次、書店、読者、誰もが「このままじゃ本の未来は厳しい、何があってもおかしくない」と感じてるはずなのに、図書館の公共性を讃える人はそんなことまったく感じていないみたいで」と。また、「司書が、図書館が、ではなく本そのものが過去のものと言われかねない」。当然本を巡る状況は宜しいものではなく、この危機感は多くの人が共有すべきかと思う。しかし、この〈危機〉は昨日今日に始まったものではない。ここで翻訳家の山岡洋一氏の「統計にみる出版不況」という論攷*1が参照されているのだが、それによると、
ということだ。つまり、「出版不況」というのは1980年から始まっていることになる。少なくともより長期的なトレンドを見る限りでは、ケータイでもインターネットでもゲームでもない、何か別の要因が絡んでいるんじゃないかと疑ってみるべきだろう。それが何かはちょっとわからないけれど。また、丸谷才一先生もどこかで指摘していたと思うが、昔(例えば戦前の日本)はもっと酷かったということができるかも知れない。本を読む人が増えたことに戦後の経済成長や高学歴化が絡んでいることはたしかだろう。芥川龍之介にせよ吉川英治にせよ、今よりもっと不利な出版市場を相手に仕事をしていたということになる。昔はもっと酷かったとか出版なんてそもそもこんなものだ*2と思ってしまえば、少しは気が楽になるのかも知れない。
市場規模が縮小傾向にあるなかで新刊点数が増えているのだから、新刊1点当たりの売上は大幅に落ちている。この点は、市場規模を新刊点数で 割って新刊1点当たりの市場規模を算出すれば、ある程度まで確認できる。新刊1点当たりの市場規模は1980年をピークに、その後20年以上にわたって、大幅に減少してきた。1993年には2064万円だったが、2002年 が1363万円だから、過去10年に34%も減っている。ピークの1980年は2465万円であり、過去22年では45%の減少だ。後に触れるように、出 版は固定費の比率が高く、変動費の比率が低いので、1点当たりの部数と売上が増えると、利益率が急激に高まる。逆に、1点当たりの部数と売上が減ると、利 益率が急激に下がり、赤字にすらなる。だから、新刊1点当たりの市場規模の減少は、出版業界にとってきわめて頭の痛い問題であるはずだ。
長期的なトレンドということで、記述を現代史の復讐も兼ねて、いくつか切り抜いておく;
今度は1980年代末からの話;
なにしろ高度成長は団塊の世代が社会人となってすぐに破綻を来した。エネルギー危機、ドルショックと続いた頃、えらいことになったもんだなぁと思ったことを思い出す。ほとんど毎日客先との受注価格の変更交渉を地道に航空郵便とテレックスでやりとりしていた。そのうちみるみる受注量は減っていった。すると業界全体が構造改革が必要だとして横並びに生産設備を削減した。しばらく経つとその分野からはお払い箱となり、社内で異動となった。国内市場の好転がなかなか見込めないから海外市場を目指す、といった具合。バブルの頃は確かに今では考えられないくらいのむちゃくちゃな市場だった。何をやっても良かった。何をやっても必ず仕込んだ時よりは売る時の方が高く売ることができた。マネーゲームに手を出さない企業は経営者の怠慢だとまで思われていた。この頃は舵こそ取っていなかったけれど、原動力そのものであったことは否めない。ようやくわれわれの時代が来たと確かに思った。しかし、その後にやってきたのはリストラクチュアリングの嵐だった。そこからは一気呵成に能力主義、成果主義というシステムの導入によって放り出されてきた。
http://d.hatena.ne.jp/nsw2072/20070110#p2
社民党・共産党が増税反対を叫ぶ(88年〜90年)→世の右も左も社会を斜めに見ている有権者が税金を払うのをばかばかしい感覚になる(89〜93年)→最初は「庶民いじめ」に抵抗している社民党や共産党に投票するが(89〜95年)→だんだん無力だとわかる(91〜96年)→そこへリアルに小さな政府論を唱える新保守主義の若手議員が公務員や生活保護受給者、果ては介護や保育を利用している人まで攻撃対象にして行革を絶叫する(93〜01年)→あまりにリアルなので税金を払いたくないだけの有権者は社・共からこぞって新保守若者に投票し上位当選する(95〜03年)→そんなムードのところにアメリカ金融業界の手先かも知れない小泉・竹中が現れる(01〜06年)→小泉・竹中が本格的に社会保障をカットする。政治合意のとれやすいので母子家庭や障害者家庭など少数派から切る。(01〜現在)、というのがここのところの政治の流れだったんじゃないかと思う。
http://kurokawashigeru.air-nifty.com/blog/2007/01/19_ec22.html
図書館に話を戻すと、図書館がコレクションして公開するのが期待されているのは紙の本には限らない。アナログ・レコード、CD、DVDなどのオーディオ・ヴィジュアルもそうだ。また、ウェブ・ページも。
図書館に関する思い出をひとつ書けば、今は行われているのかどうかわからないけど、昔(70年代後半から80年代にかけて)東京の区立図書館ではよく映画上映会を行っていた。それも上映後に監督のトークがあって、しかも入場無料。大島渚とか篠田正浩といった映画監督の生の話を初めて聴いたのはそういう機会だった。