周鉄海

日曜日は、上海美術館*1の『周鉄海 〓*2一種歴史*3*4の最終日。
周鉄海については既にknt13さん*5が紹介している。駱駝のキャラクターのポップな絵を主とする。今までは、ネットや雑誌の画像で観ていたのだけれど*6、実物を観ると、迫力が違う。多くの作品が縦横とも3メートル以上のものだからだ。
アートが外的世界や内的世界ではなく、アートという社会文化的制度そのものを主題とするようになったのは、いつ頃から。マルセル・デュシャンの「泉」以降? 私見によれば、多分それを区切りとして、アートは近代から現代へと移行する筈だ。そこにおいては、例えばリアリズム等々の技法も、アートのリソースではなく、トピックとなる。周鉄海はそういう意味において、まさしく現代に属するアーティストである。駱駝のキャラクターは現代的な様々なシーンに、或いは泰西名画の中に出没するが、そこで照らし出されているのは、生臭い社会文化的制度としてのアートそのものなのである。勿論、それとともに、アートを相対化するということはアートの内部に留まることによってしかできない、それもまたアートの特権ではあるというパラドクスも示される。アートという制度それ自体のトピック化ということでは、アクリルによってフェイクされた〈中国画〉というのも挙げておこう。因みに、駱駝のシリーズの多くは、新聞紙を貼り合わせた紙の上に描かれている。
また、展覧会に合わせて、上海書店出版社から画集が出ている*7
上海美術館では、『喬治・阿瑪尼回顧展(Giorgio Armani Retrospective)』*8も行われている。こちらの方も人がいっぱい。アルマーニの展覧会ということで、あまり興味はなかったのだが、個々の展示よりもRobert Wilsonによる会場全体のデザインが素晴らしい。そして、Michael Galasso*9によるミニマリズムな音楽。
あと、Richard Green*10の写真展もひっそり開かれていたが、小粒な展示ながら、なかなかのもの。
2階のカフェで、ギネスを呑んで休憩した後、上海美術館の裏手に「上海大劇院画廊」というギャラリーがあるのを発見。ここでは、呉健という画家の作品が展示されていた。1942年に杭州に生まれ、80年代に渡米する。その里帰り的な個展ということだが、画題はバレリーナの少女たち、チベットの風俗、それから社会主義リアリズム風の歴史画。あまり上で言ったような〈現代〉は感じない。アメリカで人気があるようなのだが、アメリカの美術館のキューレーターや絵画コレクターっていうのは、こういうのがお好みなのだろうか。
人民広場から淮海路方面に歩くが、途中雨に降られ、ずぶ濡れ。

*1:http://www.cnarts.net/shanghaiart/

*2:ling4. 口+力(or 別のりっとうを取ったもの?)。GB3377.

*3:英語では、”An Other History”となっているが、”An Alternative History”の方が妥当なのではないかとも思った。

*4:http://china.shanghartgallery.com/galleryarchive/exhibition.htm?exbId=919

*5:http://d.hatena.ne.jp/knt13/20060228/1141139822

*6:因みに、彼は2000年に東京の原美術館で個展を行っている。遺憾ながら、私は観に行っていない。

*7:展覧会の型録は300元以上する豪華本で、これは予算上の都合で買わなかった。また、http://china.shanghartgallery.com/galleryarchive/artist.htm;jsessionid=4EB5354877238145DE5AB53326AB8F22?artistId=42から周鉄海についての多くのテクストがリンクされているが、ちょっとまだ読み切れない。

*8:http://www.cnarts.net/shanghaiart/information/read.asp?id=212

*9:http://www.michaelgalasso.com/

*10:http://www.richardgreenphoto.com/