「保衛春節」!?

 春節は中国最大の祝日だということなのだが、次第にその意味は空洞化しつつあるらしい。
 今年、「市民信箱」が上海市民8000人を対象に行ったアンケートでは、87%の人が春節は「一年中最重要的節日」だと認識しているものの、実際にどう感じたかということだと、14%の人が今年の春節は「非常疲労」、30%が「没新意」、20%が「没感覚」と答え、「愉快」と感じたという人は27%にすぎなかった。また、ここ数年間の春節に関して、「張り合い(勁)が増している」という人は8%にすぎず、26%の人が「張り合いがなくなってきている」と答えている。「不少市民感覚春節越来越乏味、伝統節日慶祝方式有待創新」*1
 ところで、中国では、それ以前から〈春節の危機〉が叫ばれている*2。昨年のクリスマス直前に、民俗学者の高有鵬氏(河南大学黄河文明研究中心副主任)が「保衛春節宣言」を発表した*3。また、広州で発行されている『新週刊』(1月15日号)は、高有鵬氏へのインタヴューを含む、「為什麼過節:全球化浪潮下的文化認同」と題した特集を組んでいる。問題となっているのは、グローバル化に伴う、クリスマスやらヴァレンタイン・デイやら太陽暦の新年やらといった、「洋節日」、「舶来的節日」の侵入であり、商業主義による精神性の空洞化といったことである。高氏の言葉で言えば、「中国人的文化尊厳和身〓*4認同」を「保住」すること(『新週刊』、p.31)が問題になっている。グローバル化における文化アイデンティティの問題なのである。他方で、中国独特の事情も指摘されている。Shanghai Dailyの記事によれば、文化大革命における伝統文化の抑圧や1990年代における爆竹の禁止が伝統的節日のexcitementをdiminishさせ、そのことが若い人を「洋節日」に向かわせしめていると解釈する向きもある*5

*1:單芸「八成市民春節花銷超過千元」『東方早報』2006年2月6日

*2:Xinhua “Loss of traditions, Western inroads lamented in China” Shanghai Daily 6 February 2006.

*3:Shanghai Dailyの記事によれば、ネットで読めるらしいが、まだ見つけていない。

*4:fen4。にんべん+分。GB2361

*5:同じ日のShanghai Dailyには、〈攘夷〉的な言説に反論したWU Jiayin “Foreign holidays are not necessarily incompatible”という文章も掲載されている。