そういえば



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現象と見られるほどのベストセラーになると、小説を虚心に読んで評価するというのが後回しにされるというか、そういう書評が出ていても見過ごされて現象解析が盛り上がるんですね。
渡辺淳一失楽園』というのも、中年男性が閑職になって自分を取り巻く周囲を見られるようになり、迫りくる老いと死を意識する話で、あのくらいの年代の人にとっては切実な物語になってただろうというのはあるんですが、小林信彦はその辺を評価してましたが、あとは『失楽園』にはまるオヤジを揶揄するような記事が目立ちました。

失楽園』は渡辺淳一の小説も森田芳光の映画も読んだり観たりはしていないのですが(汗)。そういえば、宮台真司氏が江川達也との対談で、『失楽園』は「オヤジ」にとっての「ハルマゲドン」的なユートピアを描いていると述べていたと思います*1。それは「揶揄」である一方で、けっこう本質を衝いているのでは? 「中年男性が閑職になって自分を取り巻く周囲を見られるようになり、迫りくる老いと死を意識する話」というのは所謂〈中年危機〉という、社会学や心理学だけでなく文学的にもかなり普遍的なテーマだとは思うのですが、渡辺淳一の場合、『阿寒に果つ』のような初期の作品からも覗えるように、かなり若い頃から「死」を意識していたのではないかとは思います。