5はない、たしかに


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金井美恵子さん、お元気なのでしょうか。先日、泉鏡花賞の選考委員を降りられたとニュースで知り、また、ウェブチクマの連載も途絶えているので、心配です。
 私は、「〈3.11〉はどう語られたか 目白雑録 小さいもの、大きいこと」で魅力に捕らえられ、「エッセイコレクション」へと読み進んできた最近の読者です。「コレクション3」の深沢七郎と『風流夢譚』の考察は素晴らしかった、すごかったです。

先ず『中日新聞』;

泉鏡花文学賞50回目 継続は「金沢の底力」
2022年10月22日 11時52分 (10月22日 11時53分更新)

今回で退任の金井美恵子さん
 金沢市が主催する泉鏡花文学賞が今年で五十年を迎えた。地方自治体が主催する文学賞の草分けで、五十年継続した同様の賞は例がない。受賞者をみると、純文学からSF作家、新人からベテランまで幅広く、中には鏡花賞受賞後に芥川賞直木賞を受けた作家もいる。ユニークな賞として歴史を重ね、文芸の世界での評価を高め続けている。 (松岡等)


 泉鏡花の生誕百年にあたる一九七三(昭和四十八)年に制定。対象にするのは「泉鏡花の文学世界に通ずるロマンの薫り高い作品」だ。金沢にゆかりの深い五木寛之さんが、当時の岡良一市長に制定を進言。五木さんは第一回から今回まで選考委員を務め、賞を支え続けている。


 第一回から十五回までの選考委員の顔ぶれは、五木さんのほか井上靖奥野健男尾崎秀樹瀬戸内晴美三浦哲郎、森山啓、吉行淳之介の各氏で、当時の文壇でもそうそうたる名前が並ぶ。その後、入れ替わってきたが、金井美恵子さん、村田喜代子さん、山田詠美さん、綿矢りささんら女性を加えて、若返りも図ってきた。
 デビューしたての吉本ばななさんらを選出する一方、晩年の野坂昭如さんや丸谷才一さんら大ベテランも受賞するなど多彩。賞嫌いでも知られた澁澤龍彦さんに「賞をもらってもらった」(五木さん)というのは語りぐさだ。必ずしも文壇の中心にいなくても、泉鏡花の世界に通じる作家が選ばれてきた。今回の大濱普美子さんの受賞で、計六十八人の受賞者は男女とも三十四人ずつになった。
 七九年の第七回受賞者で、二〇〇〇年の第二十八回から二十三年にわたり選考委員を務めた金井さんは今回で退任を表明した。過去五十年の受賞作家を振り返り「作品の世界観をしっかり持った人が多い。文学界に与えた影響というより、文学界が持つ影響力を先取りした作家を選んできたんだなと思う。選考する身としては緊張感を感じてきた」と、選考委員がこの賞に真摯(しんし)に向き合ってきたことを指摘した。
 それは九四年の第二十二回が「該当者なし」だったことにもうかがえる。五木さんは過去の授賞式でたびたび「市民の熱意が失われるならばやめてもいい」と、あえて厳しい言葉をかけた。地元を鼓舞してきたことも継続につながった。
 金井さんは「選考している私たちとしては、他の賞にかなうものはない、お世辞でもなんでもなく、心底そう思っている」と強調した。後発で廃止となった地方文学賞もある中で、続いた五十年という歴史に「私たちも驚く。金沢市の持つ底力ではないか」と話す。
     ◇
 第五十回泉鏡花文学賞の授賞式は二十三日午後二時から、金沢市大和町の市民芸術村パフォーミングスクエアである。式後に五十回記念の文芸フォーラムがあり、五木さんと金井さんがそれぞれ特別講演、選考委員らによるシンポジウム「泉鏡花文学賞の今とこれから」が予定されている。


大濱普美子さん節目の受賞
「鏡花 時空超えて佇んでいるよう」
 節目となる五十回目の泉鏡花文学賞は、ドイツ在住の作家大濱普美子(ふみこ)さんの小説「陽だまりの果て」(国書刊行会)。介護施設の高齢者と亡くなった息子との現世を超えた再会を描く「ツメタガイの記憶」など六作から成る短編集。独特の文体で生と死を行き来する幻想的な世界を描く。選考した金井美恵子さんは「群を抜いた文章力と構成力、小説への愛情が感じられた。泉鏡花の世界に似通っている部分があり、五十回目にふさわしい」と評価する。
 大濱さんは一九五八年東京都出身。慶応大文学部フランス文学専攻卒後、パリ第七大学修士課程修了。九五年からドイツ在住。著書に「たけこのぞう」「十四番線上のハレルヤ」(ともに国書刊行会)がある。


 受賞決定に際し大濱さんは出版社を通してコメントを発表した。自身の創作を「書くことの始まりにはいつも、現実の『今、ここ』から、遠くの別の場所へ行こうとする思いがあった。けれどその別の場所とは、実際に存在する、または存在した場所とは微妙に異なり、おそらくは自分の記憶や想像の中にしかない、実はどこでもない場所なのではないかと思う」といい、作家泉鏡花について「時空を超えて果てしなく遠いところにいて、私が実際に訪れたことのある町とはどこか別の『金沢』に、いつまでも密(ひそ)やかに悠然と佇(たたず)んでいるような、そんな気がする」とした。
https://www.chunichi.co.jp/article/568336

さて、金井さんの連載は紙版の『ちくま』には載っていないのですね。ご指摘のように、『重箱の隅から』は2022年10月13日更新の


「墓場とユリカゴ④」https://www.webchikuma.jp/articles/-/2916


で止まっていて、その最後に「(つづく)」と記されて、「次回は12月8日更新です」ということになっているのに、年が明けても「更新」はない。
たしかに「心配」ですよね。金井さんは『凶区』の同人だったわけだけど、相次いで他界しているのでした。昨年9月に鈴木志郎康*1、そして今月には天沢退二郎*2。勿論、この2人は金井さんよりも上の世代ですけど。