「かもしれない」に責められ

関雄輔*1「加害と被害 境界揺らぐ不穏」『毎日新聞』2021年12月11日


木村紅美さんへのインタヴュー記事。小説『あなたに安全な人』を巡って。


不穏で、緊張感に満ちた小説だ。舞台は、コロナ禍で「感染者第1号」は出ることを恐れる地方の街*2。教え子を自死へと追い詰めてしまったかもしれない元教師の女性と、沖縄の新基地反対デモの参加者を事故死させてしまったかもしれない元警備員の男性が出会い、奇妙な共同生活を始める。二人はともに「かもしれない」という記憶にさいなまれている。「誰しも、あの時、あの人を傷つけてしまったというような思いを抱くことはあるのではないでしょうか」
3年前、沖縄で座り込みに参加し、機動隊員に両手足をつかまれて運ばれた。優しく担ぐ人もいれば、ねじ上げるように持ち上げる人も。「一口に機動隊員や警備員と言ってもさまざま。この人たち何を考えているんだろうと思い、善悪や加害と被害の境界が揺らぐ感覚があった」と振り返る。