「探偵」「図書館改革に取り組む」

国本愛*1「本の楽しさ 学校図書館改革から」『毎日新聞』2022年5月23日


赤木かん子さん*2へのインタヴュー。


――子どもの頃から本好き?
◆5歳の時に「本でご飯を食べていこう」と考えるくらい好きだった。ただ、成長するにつれて、自分はあくまでも物語を消費する側で、つくる側ではないと感じるようになった。だから高校時代から図書館や出版社でアルバイトし、向いている仕事を探した。行き着いたのが、書評のライターだった。大人へのクリスマスプレゼント用に、児童書を紹介する「烏賊」という雑誌を作ったら、とても好評で、徐々に書評の仕事が来るようになった。

赤木さんは「本の探偵」とも呼ばれている。
◆その雑誌に、子どもの頃に読んだのに、タイトルや作者を忘れてしまった本を見つける「本の探偵」を始めます、という広告を出したのが始まり。子ども時代に印象に残った本を尋ねることで、子どもがどんな児童書が好きななのかが分かると考えた。手紙で5000通以上の依頼が舞い込んだ。どの依頼にも本を探すのに役立つサイズや挿絵といった情報が実に正確に記されていて「子どもはビジュアルに強い」と感じた。

「図書館改革」について;

◆40代後半の頃、東京都内の小学校の図書館に行ったら、本の種類やレイアウトなどのひどさにびっくりした。整頓されているけど、「使えない図書館だ」と思った。正直に伝えたところ「じゃあ直して」と頼まれた。気軽に引き受けたが、どこにも図書館改革のやり方なんて書いていなくて、1年半もかかった。改革後、図書館を使う子どもの数が年間10倍になったと聞いた。
そこから、各地の学校の図書館改革を頼まれるようになった。横浜市内の公立中学では全校生徒が1000人を超えるのに、月の利用者は5人ほどだった。3日間の改装によって約350人に増やすことができた。
「図書館改革」の「ポイント」は、「居心地のいい部屋に魅力的な本をたくだん置けば、子どもは自然と足を運ぶようになる」ということだという。
「読書」について;

◆本は「自学自習の友」だ。今でも、興味を持ったことを深く、どこまでも掘り下げることができる一番手近な手段は、本を開くことだ。それには訓練が必要で、子どもが最初から一人でできるわけではない。まずは、親や教師たちが、本そのものの使い方を教え、各ジャンルの基本的な知識を話して解説することが必要だ。
本の内容を理解するには、物事の定義といった基礎的な概念を知らなければならいが、これは抽象的なので子どもが本から理解するのは難しい。そこを乗り越えられれば、自然に子どもは学問へのモチベーションが高まる。面白い本をたくさん集めて、分かりやすく分類しておけば、自然と手に取るようになる。