Not on the water but on the train

初期においては、事故なのか事件なのかも審らかではなかった筈。
『朝日』の記事;


新幹線で火災、男女2人死亡 車内で油まく 複数けが

2015年6月30日14時37分


 30日午前11時半ごろ、神奈川県小田原市上町を走行中の東京発新大阪行きの東海道新幹線のぞみ225号(16両編成)の1号車内で出火し、緊急停止した。県警や消防によると、乗客のうち何者かが車内に液体をまいて火をつけたといい、全身にやけどを負った男と60歳くらいの女性の死亡を確認。ほか1人が重傷を負い、8人がけがをしているという。

 JR東海や県警などによると、1号車の先頭付近で煙が上がった。トイレの非常ボタンが押されたため、運転士が車両を緊急停止し、警備会社などを通じて消防や警察に通報した。乗客からも午前11時49分ごろ、「男が灯油のような液体をまいて火をつけた」と110番通報があった。

 1号車の運転台に近いデッキ付近に油にまみれた男が1人倒れており、乗務員が消火器で消し止めた。また、1号車後方のデッキにも女性1人が倒れていることを確認した。県警は、男が油をかぶって火をつけ、自殺を図ったとみている。女性は巻き込まれた可能性がある。女性は小田原市内の病院に運ばれた。

 JR東海によると、この新幹線は午前11時に東京駅を出発。約1千人が乗っていた。1〜3号車の乗客は4号車より後ろの車両に避難し、車内で待機した。JR東海は、消火活動や捜査が済み次第、車両を小田原駅まで進め、乗客を降ろすことを検討している。新幹線は午後2時9分、上下線で運転を再開した。

 政府は午前11時50分、首相官邸の危機管理センター内に情報連絡室を設置した。
http://www.asahi.com/articles/ASH6Z3VT0H6ZUTIL01T.html

30日の昼頃には、箱根山についての報道もあった。

箱根山 ごく小規模な噴火を確認 警戒レベル3
6月30日 12時37分


神奈川県の箱根山大涌谷で、29日確認された新たな噴気孔の周辺に火山灰などが積もっていることが確認され、気象庁は「昨夜からきょうにかけてごく小規模な噴火が発生したとみられる」と発表しました。気象庁は、箱根山では今後、大涌谷周辺の居住地の近くまで影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるとして、噴火警戒レベルをレベル2からレベル3に引き上げ引き続き警戒を呼びかけています。
気象庁によりますと、30日午前、神奈川県の箱根山大涌谷で、29日に確認された新たな噴気孔の周辺に火山灰が積もり、噴石が飛び散っていることが確認されました。噴気孔は直径が10メートルほどあり、火山灰などが半径30メートルほどの範囲に積もっていたほか、噴石の大きさは最大で直径30センチほどで、噴気孔から4,50メートルの範囲に飛び散っていたということです。また、北へ300メートルほど離れたロープウエーの大涌谷駅付近でも灰が降ったことが確認されたということです。
このため気象庁は「昨夜からきょうにかけて箱根山大涌谷でごく小規模な噴火が発生したとみられる」と発表し、今後、大涌谷周辺の居住地のすぐ近くまで影響を及ぼす噴火が発生する可能性があるとして、改めて火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを「レベル2」から「レベル3」に引き上げました。そして、大涌谷から1キロ程度の範囲では噴火に伴う噴石などに警戒するとともに、風下にあたる地域では1キロを超えて小さい噴石が飛散するおそれがあるとして、注意するよう呼びかけています。気象庁箱根山で噴火を確認したのは今回が初めてです。
気象庁によりますと、神奈川県の箱根山では29日午前に、観測以来初めてとなる火山性微動がおよそ5分間にわたって観測されて以降、火山性地震が多い状態が続いています。地震は30日になってさらに増加し、規模の小さいものを含めて30日午後3時までに観測された地震は572回と、これまでで最も多くなり、このうち箱根町湯本で震度3から1の揺れを観測する地震も10回観測されています。また、29日午後4時ごろからは「空振」と呼ばれる振幅のごく小さな空気の振動も断続的に観測されています。
気象庁は「今後、火山活動が活発になると、大涌谷から1キロ程度の範囲に影響を及ぼすような噴火が発生する可能性があり、自治体の指示に従って引き続き危険な範囲には立ち入らないようにしてほしい」と呼びかけています。


過去の活動と最近の状況
神奈川県の箱根山は複数の溶岩ドームからなるカルデラ火山で、最も高い神山は標高が1438メートルあります。
気象庁によりますと、箱根山では地質調査などで、12世紀から13世紀にかけて大涌谷周辺で水蒸気噴火が発生したと考えられていますが、その後、噴火の記録などはありません。
観測記録が残る昭和以降は、大涌谷周辺で群発地震や異常な噴気の噴出がたびたび発生していますが、噴火が観測されたことはないということです。
箱根山ではことし4月下旬から火山性地震が増加し、先月3日以降は、大涌谷の温泉の設備からは蒸気が勢いよく出ているのが確認されています。
また、大涌谷付近を中心に山が膨らむ傾向を示す地殻変動が観測され、気象庁は、先月6日に箱根山に噴火警戒レベル2の火口周辺警報を発表しました。
今月に入って温泉設備からの蒸気の勢いが弱まり、箱根山周辺を震源とする火山性地震も減少していましたが、29日の朝に観測以来初めてとなる火山性微動が発生して以降、火山性地震が再び増加し、29日は震度1の揺れを観測する地震が2回発生していました。
また、神奈川県の温泉地学研究所によりますと、規模の小さい火山性地震は29日は300回以上、30日も午前中に200回近く観測されています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150630/k10010132771000.html

事件に居合わせた人たちの証言。
6月30日付けの『毎日』の記事;

新幹線焼身自殺:「よいしょと容器担ぎ肩から液体を…」
毎日新聞 2015年06月30日 21時51分(最終更新 06月30日 23時52分)


 「ガソリンだ」「子どもを先に逃がして」。静かな新幹線の車内に突然炎が上がり、黒煙が充満する。何が起きたかも分からないまま乗客たちは後方の車両へただ逃げるしかなかった−−。東海道新幹線「のぞみ」で東京都杉並区の林崎春生容疑者(71)が火を放ったとされる事件。容疑者本人と乗客の横浜市青葉区の整体師、桑原佳子さん(52)が死亡、26人が負傷した。乗客たちは恐怖の時を振り返った。【内橋寿明、林田七恵、国本愛、深津誠】


 ◇不審な男

 「男は新横浜駅から乗り込んできた。リュックを背負い、ややくたびれた様子で、ビジネスマンが目立つ乗客の中で浮いていた。男は1号車内を行ったり来たりした。一度も座席に着くことはなかった。『何か変だ』と違和感を覚えた。そのうちに男は一番前の自動ドアを開けてデッキに行って、たまたまそこにいた30代ぐらいの男性と話していた。やがて男性は『あのおっさん、よく分からない』とつぶやきながら座席に戻っていった」(1号車最前列にいた東京都板橋区の28歳の男性)

 林崎容疑者だったとみられる男はさらに不可解な動きを続けた。「その後、デッキに残っていた男は座席の方に出てきて、最前列に座っていた女性に『拾ったからあげる』と1000円札を7枚ぐらい渡そうとした。女性が拒むと、1000円札を弁当箱の下に挟むようにして座席のテーブルに置き、またデッキに行った」


 ◇「火を付けた」

 「男は『よいしょ』と小さくつぶやき、透明のポリ容器を担ぎ上げ、肩から灯油のような液体をかぶった。手にライターを持っていた。『危ない!』と隣に座っていた26歳の妻と慌てて後ろに逃げ出したが、すごい勢いで煙が追ってきた。乗車したときにポリ容器を持っていた記憶はない。リュックに入っていたのかもしれない」(前出の28歳の男性)

 「男が白いタンクに入った液体を頭からかぶるのを見た。持っていたライターで火を付けた。『ガソリンだ』と誰かが叫んだ。一瞬で炎が上がった」(出張で1号車の最後尾にいた52歳の男性)


 ◇パニック

 「後ろへ後ろへと移動しているとき『子どもだけ先に後ろへお願いします』と叫ぶ女性や、『早く、早く』という男性の声がした」(1号車右側後部にいた21歳の男子大学生)

 パニックは後方の車両へと拡大した。

 「突然ドアが開いて人が押し寄せてきた。30秒ほどで灰色の煙がどっと入ってきて、足元しか見えなくなり、1歳の長男を抱えて逃げた。『誰かが灯油をかぶった』と叫ぶ声がした。知らない人がハンカチをくれたり、換気がよい場所を譲ってもらったり、人の優しさを感じた。生きていてよかった」(岐阜に帰郷するため2号車の先頭にいた32歳の女性)。2人は救急搬送されたがこの日のうちに帰宅した。

 「顔がすすで真っ黒の人や目が真っ赤の人が逃げてきた。すごく焦げ臭かった。逃げる途中、『早く行って』『子供がいるから通して』と大きな声が聞こえた。周りが見えないぐらい白い煙が充満していた。苦しくなって自分たちで非常ドアを開けた。新幹線の車内で自分で油をかぶるなんて……。みんな冷静で車掌の指示に従っていた」(3号車にいた三重県の30歳の女性)

 新幹線は緊急停止した。「年配の女性が女性の乗務員に肩を抱かれて3号車に入ってきた。女性は『自分が(1号車の)最後だからもう人はいないよ』と話していた。顔が真っ黒で髪の毛も焼けているようだった」(3号車にいた名古屋市の25歳の男子学生)

 車両内は警報が鳴り響き、乗務員に1号車へ向かうようアナウンスがあったという。消火後の1号車は前方の天井がただれたようになっていて、座席も真っ黒くなっていた。ジュースの紙パックが溶け、転がっていた。
http://mainichi.jp/select/news/20150701k0000m040105000c.html

火を点けた林崎春生の人となり。
やはり『毎日』の記事;

新幹線焼身自殺:近所の人「容疑者はアパートに20年」
毎日新聞 2015年06月30日 23時49分(最終更新 07月01日 01時15分)


 30日午前11時40分ごろ、神奈川県小田原市を走行中の東京発新大阪行き東海道新幹線の先頭車両で、男が油のような液体を自分の体にかけて火をつけた。神奈川県警によると、男は全身にやけどを負って死亡。乗客の女性1人が車両内で倒れ、病院で死亡が確認された。県警は男が焼身自殺を図ったとみて、殺人と現住建造物等放火容疑で捜査している。男は東京都杉並区西荻北、林崎春生容疑者(71)。死亡した女性は横浜市青葉区荏田町、整体師、桑原佳子さん(52)。

        ◇

 林崎容疑者は東京都杉並区の住宅街にあるアパート1階に住んでいた。近所の男性(71)は林崎容疑者について「約1カ月前、たまたま顔を合わせた時に『(男性宅の)敷地内に生えているキリの木は根が張ると建物を壊すので、早く切った方がいい』と言っていた。親切で、おとなしそうな人だった」と話した。

 近くに住む50代女性は「自分は20年ほど前から住んでいるが、その頃から住んでいたのではないか。あいさつを交わす程度だが、いつも帽子をかぶっていて、穏やかで質素な感じがした。いつも1人でいる印象がある。最後に見たのは1カ月もたたない時期だったと思う」と語った。

 一方で「何年か前、夜に親戚らしき人と電話をして怒鳴っている声を聞き、驚いた。1年たたないぐらい前には、アパートの窓ガラスが割れた音を聞いた」と話していた。【一條優太】
http://mainichi.jp/select/news/20150701k0000m040138000c.html

また事件前日のこと。
やはり『毎日』の記事(7月1日);

東海道新幹線焼身放火:油、前日に購入か 容疑者宅を捜索
毎日新聞 2015年07月01日 東京夕刊


 神奈川県小田原市を走行中の東海道新幹線「のぞみ225号」で男が焼身自殺し、乗客が巻き添えになって死亡した事件で、自殺した林崎春生容疑者(71)=東京都杉並区西荻北=が事件前日の6月29日、自宅近くでポリタンクを台車に乗せ、「ガソリンスタンドに行く」と近所の住民に話していたことがわかった。神奈川県警は林崎容疑者がポリタンクを隠して車内に持ち込んだ可能性が高いとみて経緯を調べている。

 県警は1日、林崎容疑者の自宅を殺人と現住建造物等放火容疑で家宅捜索した。

 容疑者宅の近所に住む顔見知りの60代女性によると、女性は29日午後、自宅近くでポリタンクを台車に乗せて歩いている林崎容疑に会った。林崎容疑者は「ガソリンスタンドに行く」と話し、女性が「なぜ」と聞くと、「別に」と答えたという。女性によると、林崎容疑者は1年ほど前に清掃関係の仕事を辞めた。最近は出会う度に「年金が少ない。12万円の支給から家賃と光熱費を払ったら生活できない」などと不満を言っていたという。

 一方、県警によると、のぞみの1号車に設置されたカメラに、林崎容疑者がリュックサックからポリタンクを取り出す映像が映っていた。ポリタンクに入っていた液体をかぶる様子も映っていた。ポリタンクは白っぽい透明で、10リットルほどの大きさ。県警は1日、林崎容疑者と、事件にまき込まれて死亡した桑原佳子さん(52)の遺体を司法解剖する。【深津誠、福永方人】
http://mainichi.jp/shimen/news/20150701dde001040064000c.html

不謹慎だということは承知しているが、もしディープ・パープル*1が乗り合わせていたら、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」ならぬ〈スモーク・オン・ザ・トレイン〉という曲を作っていたかしらというお馬鹿なことを考えていた。
Machine Head

Machine Head

ブラック・ナイト=24カラット(紙ジャケット仕様)

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それから、この林崎という爺、「新横浜駅から乗り込んできた」ということなのだが、杉並から新横浜までどのようにして行ったのか。杉並から東京駅までなら、中央線か丸の内線で1本なのだろうけど。爺が(リュックに隠していたとはいえ)ポリタンクを背負って電車に乗っていたら、相当目立った筈だ。リュックといっても、デイパックのようなものじゃなくて、大きい登山用のリュックでしょ? そんなのを、これから山に登りますという感じでもない爺が担いでいたら、相当に怪しい筈だ。
多くの報道で、「年金」に対する不満が言及されている。「キモくて金のないオッサン」ということでオチをつけようとしているのだろうか*2。でも、それだと、何故わざわざ重い思いをして新幹線に乗ったのかということは説明できない。自殺をするなら、場所はもっと近場に幾らでもある筈だ。抗議ということがあるにしても、もっと政治的にアピールしやすい場所はやはり幾らでもある。新幹線、さらにいえば小田原の手前というのがどういう意味を持っているのか。林崎の71年間の人生の中にヒントくらいは隠されているのだろう。
時事通信の記事によれば、林崎は若い頃「流し」をやっていたという*3。ギターを抱えた林崎にディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」をやっておくれよとリクエストしたら、弾いてくれただろうか。