東直子「この世は一つ。一緒に生きる。」『あのね』(福音館書店宣伝課)356、2022
「子育てに関わるエッセイ集」『一緒に生きる 親子の風景』を巡って。
子どもを育てている人の中に、一点の曇りもなく、晴れ渡る五月の空のようになんの不安もない、という人はどのくらいいるのでしょうか。程度の差はあれ、不安が一つもない人はいないように思います。私は、楽しみ半分、不安半分くらい雲のかかった子育ての空模様でした。そしてその不安や心配の多くの部分が、遠い未来の時間に対してのものだった気がします。
「育てる」と思うと、責任がずしんと重く感じてしまいますが、とにかく一緒に生きていくのだ、と思うと、少し木も楽になるかな、と思います。
子どもは、永遠に子どものままではなく、成長を続けていきます。家庭の数だけ、子どもの数だけ、そこで起きるエピソードは異なります。子どもの数だけ、持って生まれたおもしろさがある、と思います。おもしろかったなあ、としみじみ思い返すのは、ちょっと時間がたって客観的になれるからで、その真っ最中はなかなか余裕をもって考えるのは難しいと思います。難しいことを承知の上で、でも、おもしろいよ、と耳打ちするように書いたのがこの本なのです。さらに、子どもが今そばにいない人にも、こんなふうに思える時間があるよ、と伝えたいと思いました。