シュメールの本屋

永江朗*1「知の伝達担い4500年 進む多様化」『毎日新聞』2022年4月2日


ジャン=イヴ・モリエ『ブックセラーの歴史』の書評。
「書籍商に焦点を当て書物の歴史を解説する本」だという。


書店はいつごろ誕生したのか。著者によると、紀元前2500年のシュメールでは作家も図書館も存在していたという。ならば書店もあったのか。著者は断定を避けつつも、教科書や辞書や祈禱書や神話などの書物が販売されたり交換されたりしたとみられている、という。4500年も昔から書店はあった(らしい)。

紀元前4世紀を生きたプラトンアリストテレスが定期的に書店に足を運んでいたのは間違いないと著者はいう。その書店には文筆家たちが集い、同業者たちの仕事について批評していた。
もちろんそのころの書物は印刷ではなく手書き。マルティアリスという詩人が西暦80年頃に発表したエピグラムが紹介されている。歌われているのは解放奴隷のセクンドゥス。2000年前の書籍商とは「自分の店で販売する原稿の写字を行なう奴隷のことを指していた」のだそうだ。大昔の書店は、書物を製造(書写)し、販売し、そこに知識人が集まって議論するような場所だった。トークイベントや読書会を開催し、出版もする現代の書店と同じだ。