伊藤隆太問題

中国新聞』の記事;


広島大助教が差別的投稿 学生団体が解雇求める署名活動
2021/8/10 22:18


 広島大大学院の伊藤隆太特任助教国際政治学*1ツイッターで「道徳的に劣っている中国人をまともに相手にする必要はない」などと差別的な投稿をしていたことが10日、分かった。差別問題に取り組む学生団体は広島大などに対し、伊藤氏の解雇を求める署名活動を始めた。

 伊藤氏は投稿を削除した上で同日、中国新聞の取材に「配慮が足りなかったことについて真摯(しんし)に反省している。傷つけられた方々には心からおわびしたい」と謝罪した。

 投稿は7月30日に書き込まれた。「心の中で冷たく軽蔑して後はドライに無視すればよい。やられたからと言って報復するのは(中略)、同じ低いレベルに落ちるということなのでやめよう」などと記述。東京五輪での日本人選手の判定を巡り、中国の会員制交流サイト(SNS)で不満が噴出したことを報じる記事に関連し、投稿された。

 学生団体「Moving Beyond Hate」は、伊藤氏はこれまでも人種や性による差別発言があると問題視。専用サイトで、伊藤氏が教える複数の大学に対して解雇と再発防止を求める署名を募り、既に1400件以上が集まったという。代表の東京大3年トミー長谷川さん(21)は「個人にとどまらない問題。教育機関として適正に対処し、二度と繰り返してほしくない」と話した。

 広島大は、問題を受けて伊藤氏を指導した。同大の永山博之法学部長は「私的なツイートとはいえ、不適切な内容。今後このようなことがないように措置を取る」としている。
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php

まあ「中国人」云々というのは、過度で不当な一般化であるといえるだろうし、「道徳的に劣っている」ということ、或いは優れていることというのが全く自明なことではないことは少し考えればわかることだろう。ベルクソン(『道徳と宗教の二源泉』*2)に倣って「閉じられた道徳律」と「開かれた道徳律」の区別を持ち出すまでもなく、全く同じ振る舞いや考えが或る共同体(社会)の内外では道徳的にも反道徳的にもなるというのはありふれたことだ。また、特殊主義的な視点や立場と普遍主義的な視点や立場との対立。例えば、愛国心のようなものは、個別の国家社会においては道徳的であり得るかも知れないけど、グローバルな視点や立場からすれば反道徳的でしかあり得ない。See also


福冨旅史「広島大学助教が差別的ツイート。大学は問題視「許されない」」https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_61138797e4b005ed4905eaf8
Moving Beyond Hate「Twitter上・講義中に多くの差別発言を行った広島大学助教伊藤隆太氏の差別に反対する署名キャンペーン」https://note.com/movingbeyondhate/n/nd0b6eb7f06c0
広島大学の進化政治学伊藤隆太特任助教外国人差別や優生思想のツイートがひどい件」https://www.naka2656-b.site/archives/30126850.html


伊藤は自らの発言の多くを「進化心理学」に正当化しているようだ。私は、「進化心理学」という知的運動が現体制や支配的な偏見を〈科学〉っぽい衣に包んで正当化しようとする試みにほかならないのではないかという疑念をずっと持ち続けている*3

*1:See eg. https://researchmap.jp/read9124998

*2:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160318/1458269989

*3:See eg. Sharon Begley “Don’t Blame the Caveman” Newsweek June 29 2009, pp.42-47[Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20090624/1245863553]