甘楽郡の「保育園」

都築響一「ROADSIDE DIARIES 移動締切日 第24回」『scripta』(紀伊國屋書店)58、pp.6-21、2021*1


群馬県甘楽郡にある「アダルト保育園」について。「地元の庭師・中條狭槌さんが手がける驚異の自作庭園&インスタレーション空間」(p.8)。


庭師ひとすじに働いてきた中條さんがアダルト保育園造成(?)に目覚めたのは2007年ごろのこと。もともと畑だった土地に、娘さんに頼まれてカーポートをつくったものの、娘さんが独り立ちして使わなくなったので「部落の集会や飲み会に使える部屋をつくって、我が家の来客の応対なんかにも使ってるうちに、どんどん物が増えてって」徐々に拡張。「急に目覚めちゃってね。基本は廃物廃材アートで、あとはシャレとユーモア」だそう(本人談)。
晴れ渡った猛暑のお昼時、無人の現場を汗だくで撮影していると、いつのまにか3人ほどのお年寄りが集まってきて木陰で楽しそうにおしゃべりを始めていた。「お邪魔してます」と声をかけると、「お~よく来たね、どこから?」と聞かれる。一瞬ドキッとしながら「あの~東京から」と答えたら、イヤな顔をされるのかと思いきや「それはわざわざご苦労さん!」とニコニコしてくれた。仲良しの友達同士で三々五々、昼前くらいから毎日のように集まって遊んでいるそうで、お達者クラブの部室のような⋯⋯。
ここは珍スポットと言われればそのとおりで、テレビ番組のネタにもずいぶんされてきたし、かなりエロでもあるし、アウトサイダー・アート環境と呼ぶにふさわしいエネルギーに溢れているけれど、でも不思議なほどエキセントリックな匂いがしない。世間に理解されない恨みや、精神の苦悩といったネガティブな気配がまったくない。群馬の山中の小さなコミュニティで、ふつうだったら浮いたり迷惑がられたりする存在になりがちなのに、毎日遊びに来る仲間たちは、まるでふつうの集会所みらいに缶コーヒーやヤクルト片手にくつろいでいる。
クレイジーな自作庭園は日本に限らず世界中でずいぶん見てきたけれど、こんなふうにコミュニティに開かれ許容された場所は、僕にとってもかなり新鮮だった。おしゃべりに加わっていた中條さんは、「いや~、もう80歳のエロじじいですから」(藤あや子壇蜜がお気に入り)と笑っていたが、そういうパーソナリティがこんなに陽性なスポットを育んできたのだろう。(pp.8-9)
「アダルト保育園」については、例えば、


ツマミ具依*2群馬県の珍スポット「アダルト保育園」から考える、高齢者がナゾの芸術に目覚めるワケ」https://hbol.jp/199855
クロノ「アダルト保育園(群馬県甘楽町)」http://chrono2016.blog.fc2.com/blog-entry-307.html