Spector、specterになる - Living, Loving, Thinking, Again

Keith Harris “Phil Spector, Famed ‘Wall of Sound’ Producer Convicted of Murder, Dead at 81” https://www.rollingstone.com/music/music-news/phil-spector-dead-obit-67459/
“Phil Spector: Pop producer jailed for murder dies at 81” https://www.bbc.com/news/world-us-canada-55697979
“Obituary: Phil Spector” https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-38922788

フィル・スペクター *1が他界。享年81歳。周知のとおり、彼は殺人の咎で2009年以来服役中だが、上掲の『ローリング・ストーン』やBBCが準拠しているカリフォルニア州矯正局の発表によれば自然死であるが、少なからぬソースが、実は新型コロナウィルスに感染して刑務所から病院に移され、そこで死んだと報じている*2。
スペクターは1960年代の、ザ・ロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」やアイク・アンド・ティナ・ターナーの「リヴァー・ディープ、マウンテン・ハイ」などのプロデュースによって、「音の壁」と呼ばれた高密度な曲作りを確立し、さらに（賛否両論はあるものの）ビートルズの『レット。イット・ビー』をアルバムとして何とか完成させ、さらにジョン・レノンのJohn Lennon/Plastic Ono Band、Imagine、Rock'n'Rollをプロデュースするなど、1970年代前半にそのキャリアの頂点を迎えるわけだけど、1974年の九死に一生を得た交通事故以降、彼の運はずっと下り坂だったということになる。そして、2003年の愛人殺し*3と殺人犯としての刑務所暮らし。これは世間を驚かせたわけだけど、実は、ラモーンズ *4を含む、彼と仕事をした多くのミュージシャンが彼の暴力に怯えていたのだった*5。元妻のヴェロニカ・ベネットによれば、彼はセックスの後、必ず彼女に銃を突きつけたというし。なんだか、追悼ではなく追討になってしまったが、これは彼の業績の偉大さを否定するものでは全くない。