「神長官守矢史料館」(メモ)

平林由梨「植物を建物に取り込む設計で知られる建築家 藤森照信さん」『毎日新聞』2020年8月9日。


藤森照信*1へのインタヴュー記事。
少し抜書き。


――45歳で初めて手がけた設計は、故郷の「神長官守矢史料館」*2でした。


東京大で建築史を教えていた頃、市から受けた相談がきっかけでした。安藤忠雄伊東豊雄ら友人の建築家の顔が頭をよぎったけれど、あの集落にモダニズム建築が建つのは反対だった。通史『日本の近代建築』の執筆のめどがたった気の緩みもあり「私がやる」と引き受けてしまいました。
でも一筋縄ではいきませんでした。歴史にこびたスケッチしか描けず、耐震・耐火を備えた現代建築でなければならない縛りもきつかった。そんな時、友人宅で偶然目にした建築家・吉阪隆正の文章にヒントを得ました。中国の草原で見た泥の家のことが書かれていた。「これだ」と直感した。鉄筋コンクリート造に泥でこしらえた自然の素材を「着せる」やり方で仕上げました。あの文章に出会わなかったら、今ごろどうしていただろう。
評判は、ほとんどが「よくわからない」。おやじは「ぼろ小屋建てて」と言いましたね。でも「路上観察学会」で一緒だった南伸坊は「こっちに藤森さんがいて、あっちに藤森さんが建っていた」と評価してくれた。あれはうれしかったな。建築の面白さに目覚めました。


――これから、どのような仕事を思い描いていますか。


よく言われる言葉だけど、「自然と建築を何とかつなぎたい」ということでしょうね。作品集*3を編纂してみて、小さな茶室から大きな美術館や商業施設まで、30年間そこは一貫していたことが見て取れて、何だかほっとしましたよ。
「天国」を作ってみたいんですよ。あの世、ですね。水が流れて池があって、庭と建物がある。最近、気づいたんだけど、住宅は別として僕はずっとこの天国のイメージを目指して設計してきたのかもしれない。誰か天国、発注してくれないかな。