落書きから始まった - Living, Loving, Thinking, Again

貫洞欣寛*1「戦争のきっかけは子どもの落書きだった　死者50万人超のシリア内戦」https://www.buzzfeed.com/jp/yoshihirokando/syria2011
Mark MacKinnon “The Graffiti Kids Who Sparked the Syrian War” https://www.theglobeandmail.com/world/article-the-graffiti-kids-how-an-act-of-teenage-rebellion-sparked-the-syrian/
Josie Ensor “Six years of war in Syria: 'I regret that so many innocent people had to die,' says the boy whose defiance sparked the conflict”https://www.telegraph.co.uk/news/2017/03/14/six-years-war-syria-regret-many-innocent-people-had-die-says/

シリア内戦は既に死者50万人を超え、500万人以上の難民*2が海外に流出している。しかし、そのそもそものきっかけは14歳の少年たちの「落書き」だった。2011年２月、中東は「アラブの春」*3と呼ばれた民主化運動の高揚でチュニジアや埃及の独裁政権が倒され、祝祭的で反抗的な雰囲気に充ちていた。そのような空気の中、ハーフェズ・アサド、バシャール・アサドという父子二代に亙る独裁政権が続くシリアのDaraaというヨルダン国境に近い町で、数人の少年たちがバシャール・アサドを揶揄する落書きをした。彼らは独裁政権下の閉塞状況にむかついてはいたけれど、政治的な意図があったわけではない。しかし、独裁政権側はガキの悪戯として見逃すというようなことはしなかった*4。落書きをしていた少年のうちのひとりを逮捕し、残酷な拷問にかけ、仲間の名前を自白させた。しかし、政権の大人げない態度はシリア市民の反政府感情に火を燃けてしまった。政権がそれに徹底弾圧で応えると、市民の側もまたエスカレートするという循環が回転し、さらに米国やEU、或いは隣国土耳古、さらには露西亜やイランも介入し、シリアは何時の間にか泥沼の内戦状態に陥ってしまったのだった。

*2:シリア難民についてはhttps://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20141223/1419341514 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160213/1455328319 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160315/1458053019で言及している。

*3:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20120305/1330923949 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20120925/1348540353 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20160724/1469367085 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170324/1490358450

*4:日本だったら、落書きの内容以前に、落書きということが炎上（バッシング）の燃料になるか。