ユーゴスラヴィアという夢

安藤健二「「SFの世界のような異質感」 宇宙怪獣っぽい記念碑は、共産主義の夢の跡だった」https://www.huffingtonpost.jp/entry/spomenik_jp_5d4d439ee4b01e44e4789182


ユーゴスラヴィア各地にある「スポメニック」という不思議な「記念碑」について。「スポメニック」を含むバルカン半島(旧ユーゴスラヴィア)の「廃墟」の写真集『旧共産遺産』を上梓した星野藍氏*1へのインタヴューを中心に。
ただ、ユーゴスラヴィアについて、所謂「共産主義」として語られるのは、美学的にも歴史的にもかなり違和感がある。
「スポメニック」の美学というのは旧蘇聯や中国といった所謂「共産主義」(スターリン主義)の美学とは異質でしょう。「共産主義」の美学というのは、例えば倫敦にある、かつて英国共産党によって建立されたカール・マルクスの墓のように、もっと粗野なリアリズム(+浪漫主義)だ*2
歴史的にいえば、「共産主義」を目指していたとはいえ、蘇聯によって〈異端〉と宣告され〈破門〉を通知されたユーゴスラヴィアは東でも西でもない謂わば〈第三極〉としてアピールしてきたわけだし、それが掲げていた〈自主管理社会主義〉も非スターリン主義的な社会主義というか、スターリン主義に対する現実性の強いオルタナティヴとして注目されていた。実際は(第二極としての)スターリン主義が勝手にこけた冷戦終結を契機にして、〈第三極〉の意義が大幅に低下し、封印された種族的ナショナリズムが噴出し、凄惨な内戦を経て、ユーゴスラヴィアという想像の共同体はばらばらに吹き飛んでしまった。
だから、「スポメニック」というのは「共産主義」ではなくユーゴスラヴィアという「夢の跡」だったといえるのでは?