「突然段ボール」には及ばない

Oricon New「曲名のようなバンド名、なぜ増えた?「ラノベブーム」の影響も...」http://www.huffingtonpost.jp/2017/02/02/column-about-japanese-rock-band-name_n_14584500.html


最近、


水中、それは苦しい
「死んだ僕の彼女」
「それでも世界が続くなら」
忘れらんねえよ
カラスは真っ白
「コンテンポラリーな生活」
ヤバイTシャツ屋さん
0.8秒と衝撃。
「テスラは泣かない。」
「溺れたえびの検死報告書」


といった「まるで歌のフレーズのような、ポエムのような、長いバンド名を付けるバンドが年々増えてきている」のだという。ただ、この傾向の例として挙げられている「SEKAI NO OWARI*1ってのはそう突飛な命名ではないと思う。吃驚したのは羅馬字で表記されているからで、これが漢字で


世界の終わり


だったり、英語で


End of the World
The World's End


と表記されていたりしたら、ああそうか、という感じなのでは? まあ、宗教性との関係での議論が聞こえてこないのはちょっと不思議だけれど。
さて、記事に曰く、


また、今回の“曲名のようなバンド名”ブームの流れは、1995年に大ヒットしたスピッツの「ロビンソン」が、当時“どっちがバンド名かわからない”と物議を醸したことに端を発していると言えるかもしれない。実際、スピッツのシングルタイトルは「君が思い出になる前に」や「空も飛べるはず」などといった、どことなく現代のバンド名にも通じるような、名詞や体言止めではない“センテンス”重視の世界観を打ち出している感がある。

長文かつ詩的となれば、2000年代の『涼宮ハルヒの憂鬱』『とある魔術の禁書目録』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』などに代表される、ラノベライトノベル)ブームによる“作品タイトルの長文化・状況説明化”の影響もあるかもしれない。その影響はテレビドラマのタイトルなどにも広がり、同時にそれを略することも当たり前となった。『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)=“いつ恋”、『ダメな私に恋してください』(TBS系)=“ダメ恋”、そして昨年の大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(同)=“逃げ恥”もそうである。こうした略名を前提に長いタイトルをつけることが、今はエンタメ界全体に拡がっているトレンドなのであろう。
全然ずれていると思った。ここで挙げられているのはタイトル、つまり曲とかラノベとかドラマのタイトルの話であって、集団の名前とは関係ないじゃん。スタジオ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」とか「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」プロダクションといった映画制作会社が続出したわけではないのだ。
さて、奇抜な集団名ということで真っ先に思い出すのは、1980年代の小劇場演劇の劇団名かな。例えば、


「遊◎機械/全自動シアター」*2
自転車キンクリート*3


とか。風間研『小劇場の風景』という本の中でも奇抜な劇団名が批判的に言及されていたような気がする(というか、この本は1980年代演劇全般に対して批判的なのだが)。まあ、劇団名ということでいちばん衝撃が強かったのは(決して長くはない)渡辺えり子*4の「劇団300」だったのだけど。

衝撃的なバンド名というと、1980年にデビューした「突然段ボール*5。或いは同時代の「GUNJOGACRAYON」*6。この意味不明性にはやはり魅了されてしまう。
グンジョーガクレヨン

グンジョーガクレヨン

ところで、長いタイトルということだと、五木寛之が近頃の若い作家はだらだらと長いタイトルをつけたがるといちゃもんをつけられたことがあるらしい。例えば「さらばモスクワ愚連隊」とか「蒼ざめた馬を見よ」とか『青年は荒野をめざす』とか*7
新装版 蒼ざめた馬を見よ (文春文庫)

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新装版 青年は荒野をめざす (文春文庫)

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