妻有に行った

8月2日、新潟県十日市市と津南町で行われている「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」*1を観に行ってきた。といっても、1日でトリエンナーレ全体を観られるわけはなく、正確に言うと、トリエンナーレのオフィシャル・ツアー、「シャケ川のぼりコース 信濃川河岸段丘編」に参加した*2。午前9時半に越後湯沢駅東口に集合して、越後交通のバスに乗って、夜の19時20分頃、やはり越後湯沢駅東口で解散。驚いたことに、このツアーの参加者の半分以上が中国人だった(台湾人含む)。日本語がわからない人も多く、またガイドの女性も日本語しか話さないという中、ツアーが無事に終了したこと自体が不思議といえば不思議。
このツアーは、信濃川の流域を行ったり来たりするツアーなのだけど、アート作品のトポスということでは、このツアーの鍵言葉は(主観的には)廃校だった。いちばん印象に残ったのは、十日市市の「鉢」という集落の小学校跡を利用した「絵本と木の実の美術館」*3。、2009年のトリエンナーレで、絵本作家の田島征三が廃校になった小学校をそのまんまアート作品にしてしまった。その小学校の最後の生徒3人と学校に棲み付いたおばけを登場人物にした「空間絵本」。今回は、詩人のアーサー・ビナード*4とのコラボレーションによる、毒蛇をモティーフにした、インスタレーション「カラダのなか、キモチのおく。」が追加されている。また、十日町市(旧松之山町)東川という集落の旧東川小学校の校舎を丸ごと使ったクリスチャン・ボルタンスキーの作品も印象が強かった*5。さらに、新潟県の最南端に近い津南町上郷の旧上郷中学は「上郷グローブ座」という劇場を中心とした施設になっている。他方、作品たちの意味という層に目を向ければ、記憶或いは歴史という鍵言葉が浮かんでくる。「上郷グローブ座」に隣接した土地に香港藝術推廣辦事処*6が建てた「香港部屋(Hong Kong House)」*7に展示されているのは、梁志和(Leung Chi Wo)&黄志恆(Sara Wong)による「津南遺失博物館(Tsunan Museum of the Lost)」。50点以上の津南町の住民から提供された1960〜70年代のプライヴェートな写真。さらに、7人の住民のポートレート写真。それはそれぞれの人生の中から選ばれた出来事(写真)と同じような服装で撮られたもので、取られた人にとっては、過ぎ去り・失われたライフ・ヒストリーを再び生き直すようなことだった。
さて、十日町市の中心部にある「越後妻有里山現代美術館[キナーレ]」*8は、その(原広司設計による)空間を体験できたことで、わざわざ新幹線とバスを乗り継いで来た甲斐があったと思った。さらに、アルヘンティナのLeandro Erlichの作品「Palimpsest:空の池」はこの「キナーレ」の空間のポテンシャルを最大限に高めていると思った。
「絵本と木の実の美術館」で、アーサー・ビナード田島征三『わたしの森に』(くもん出版、2018)を買った。

わたしの森に

わたしの森に