鶴見/角谷

期待と回想 語りおろし伝 (朝日文庫 つ 12-1)

期待と回想 語りおろし伝 (朝日文庫 つ 12-1)

鶴見俊輔『期待と回想 語り下ろし伝』*1からメモ。


(前略)私は中学・高校はすっとばしているので、森さん*2の『数の現象学』(朝日選書)という素人向けの本を枕元に置いて三ヵ月をかけて少しずつ読んだ。きちんと演算をやって学校で通用するというところまではいかないが、だいたいのことが感情の受け皿、パースのいう情緒的解き口(エモーショナル・インタプリタント)というところではわかるんだ。森さんはそのように書くことに長じている。森さんつきあうことは私にとってたいへんな収穫だったんです。昔、アメリカから帰る交換船の上で、二ヵ月半、数学者の角谷静夫さん*3とつきあったことがあった。彼も数学の話をしなくては精神の平衡を保てない人で、「大きな無限、小さな無限」なんていう話をするんだ。だから、二十歳のころは角谷さんに、六十代後半では森さんに親炙することを通して、私に数学が入ってきた。(p.515)
数の現象学 (朝日選書 (388))

数の現象学 (朝日選書 (388))

また、ハーヴァード「哲学科の一年生」の頃;

それに、これまた偶然なんだが、「ウィーン学団」の多くの人たちがナチスに追われアメリカに亡命し、各地にバラバラに散って、自分たちの技法を展開していた時代でもあった。わずか五、六年のあいだにアメリカを席巻するんですよ。タルスキーもハーヴァードに講義に来ていましたよ。角谷静夫さんも来ていた。パンフレットにカクタニという名前があって、日本人かもしれないな、と思ったのを覚えています。角谷さんは位相幾何学ですから、いくら無謀であっても私はその講義を聞きにいかなかった。フィリップ・フランク(オーストリア生まれのアメリカの哲学者)の講義も聞きました。フランクという人は、レーニンの経験批判論の中で叩かれているんです。やはり「ウィーン楽団」の一人でした。(p.539)