パートナーの変容

承前*1

AbemaTIMES「「単なる不倫報道で終わらせてはいけない」小室哲哉の引退会見が社会に投げかけたもの」http://www.huffingtonpost.jp/2018/01/20/affair-news_a_23338968/


曰く、


「職業である歌手ということで、KEIKOという存在はやっぱり大きかったと思う。そこは幸いではなく、残念なことに音楽の部分が、脳のどこの部分かわからないけれども、(音楽への)興味がなくなってしまって。そのあとカラオケに誘ったり、音楽のネットを見せたり、CDを聴かせたり、一緒に聞いたり、僕なりにいざなうということを試みたが、残念ながら音楽に興味を持つことは日に日に減ってきて。今は小学4年生くらいの漢字ドリルが楽しかったりとかで、それをすごく楽しんでやってくれたり。全てがそういうレベルというわけでは全くないが、大人の女性に対してのコミュニケーション、会話のやりとりが日に日にできなくなってきて、電話や対峙して話すことも、だんだん1時間、10分、5分、3分...と間が持たなくなってきて。非常にかわいそうだなという気持ちもあるが、そこを諦めてはいけないのが精神的なサポートだというのは重々承知であったが、何度も繰り返しの質問であったりとか、そういうことでちょっと僕も疲れ始めてしまったところは、3年くらい前からあったと思います。反面、年々仕事が増えて、日々少しずつ音楽に向かいあわなくてはならない時間も増え、どうしても僕がずっとKEIKOのサポートをすることが不可能になってきたこともありました」。

介護と仕事に奔走する中で、自身も体調を崩し始めたという小室さん。「2年前にC型肝炎になってしまいまして、結局二人でいると二人とも病気がちというか、闘病みたいな形になってしまった」。それでも仕事をセーブせずに続けたが、去年の夏頃にはさらに突発性難聴に近い状態になったという。小室さんは会見の中で、現在も左耳がほぼ聞こえない状態であることを明かした。

小室さんによると、そんな中で精神的な支えになったのが、今回不倫疑惑が報じられた看護師のA子さんだった。A子さんとの関係について小室さんは「体調不良で来ていただいて、女性として来ていただいた事は一度も無い。男女の関係は全く考えていない。お恥ずかしい話ですが、この5年6年男性としての能力というのがなくて、精神的な支えが必要だった。誤解を生じさせてしまった」と説明した。


タレントの石井正則は「KEIKOさんが病気になられる前、お二人で食事をされているのを見たことがあった。静かで会話は多いわけではないが、長く関係ができあがっているような、とても仲のいいご夫婦という印象を受けた。あの小室さんにこういう姿があるんだと感じた。いつしか現実の自分と、あの"TK"との乖離が始まることもわかっていたと思う。それでもコンポーザーとしての才能を発揮し、スターであり続けなければならないという重圧、そしてKEIKOさんの介護。その両方を続けることができなくなったとおっしゃっていると感じた。今までglobeのファン、小室哲哉ファンのために、そういうことは表には出さずやってきたが、今回、抱えてきたその荷を降ろした、そういう表情をされていたと思う」と話す。

その上で、「僕は離婚を経験しているが、仲の良い女性の知人に話を聞いてもらっていた時期もあった。男女関係はもちろんない。でもスターの小室さんは、そういう相談も隠れてやらなければいけなかった。今回の会見について、僕はそういう見方をしてもいいと思う」と指摘した。

さて、丸谷才一の『持ち重りする薔薇の花』*2には、梶井のかなり年下の後妻(「アヤメ」)が50代のうちに「認知症」に罹ってしまうというエピソードが挟まれている。

そのアルツハイマー症が次第に進んだので、老人ホームに入れることにした。夫が、横になってゐる妻に向かっつて、いろいろ努力してみたけれど現実的にはどうしてもかうするしかない、薄情みらいだが勘弁してくれと詫びると、妻は、よくわかつた、そんな優しい言ひ方はかへつてわたしをいぢめることになる、と答へた。このころの口のききやうは、陰気で寂しそうだが充分に論理的で知的だった。梶井は週に二日か三日そこを訪ねることにした。アヤメの体の調子は悪くなく、車椅子を押してもらはず一人で歩けるし、食事も介助を必要としない。これはその後も変わらない。はじめのちはヘルパーや梶井にドリトル先生ケストナーを読んでもらつてゐたが、やがてDVDやCDで音楽を聴くのも稀になり、テレビを見るだけになつた。口をきくことはほとんどない。六十代のアヤメがテレビのニュースや競馬やゴルフ、歌舞伎や能や料理番組を、まつたく無表情で見てゐる様子を目にするのは、以前のいきいきした態度と比較することになつて辛かつた。(pp.144-145)
持ち重りする薔薇の花 (新潮文庫)

持ち重りする薔薇の花 (新潮文庫)