長音問題

http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170323/1490286738に対して、


白クマ 2017/03/25 15:47
プロ野球の某球団選手名のローマ字表記は、ヘボン式でも訓令式でもない一種独特の、いわば「阪神式」としか言いようのない表記が一部で話題になったことがあります。
曰く 伊藤→ITO 川藤→KAWATO 安藤→ANDO はたまた 能見→NOHMI と、 U の表記に対する激しい拒絶反応や、新庄→SHINJYO のようにヘボン式訓令式をチャンポンにしたある意味ヌエ的な表記などが挙げられますが、この某球団の担当者には、今回の表記一本化についてぜひご意見を賜りたいところではあります。
http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170323/1490286738#c1490424421
「新庄→SHINJYO」というのは城内式に近い発想ですね*1。さて、例として挙げられている、


伊藤→ITO 
川藤→KAWATO
安藤→ANDO
能見→NOHMI


というのは「訓令式」か「ヘボン式」かという問題というよりも、日本語の羅馬字表記における長音問題ですよね*2訓令式でもヘボン式でも、アーとオーとウーに関しては、アクセント記号をつけて表すということになっていますが、面倒くさいとか、PCの日本語キーボードはアクセント記号を打つことを前提として設計されていないということで、正しい表記にも拘らず殆ど使われていません。多くの場合、上の「伊藤」「川藤」「安藤」の如く長音は無視されています。まあそうすると、小野と大野、小沢と大沢を区別することができなくなります。「小沢信者」にとっては容認し難いですよね。また、ジョン・レノンの妻であるヨーコさんがかつて中国で「小野」ではなく「大野洋子」と誤表記されていたのはONOという羅馬字表記の曖昧さと関係があるでしょう*3。アクセント記号じゃない仕方で、敢えて長音を表現するために用いられているのには、字を重ねることがありますよね。「伊藤」だったらITOO。或いは「能見」で使われているようなhの使用。「能見」だけhというのはティーム内不統一のような気もしますが、王貞治もOHと表記されたんじゃないかしら。まあ、王さんの場合、Oだけだったら、ゼロって誰だよ? ということになってしまうかも知れない。ところで、仮名の表記に合わせて「伊藤」をItouと書くことは、訓令式でもヘボン式でもないですよね。仮名ではイトウと書くけれど、誰もイトウではなくイトオと発音している。だから、Itouとは書かない。でも、この原則は実は一貫していない。エーとイーはそれぞれei、iiと書く。飯田(いいだ)はともかくとして、誰も映画や英語をエイガやエイゴとは発音していません。エエガ、エエゴ。でも、訓令式でもヘボン式でも。eegaやeegoではなく、仮名に合わせてeiga、eigoと書く。一貫してないでしょ? さて、そもそも長音というのは羅馬字だけではなく仮名表記でもネックだったのだ。日本語表記の急所のひとつ*4。上の方で、羅馬字だと、小野も大野も同じOnoになってしまい、区別し難いということをいったのだけど、大野は仮名だとオウノではなくオオノと書く。仮名書きではオウ/オオ問題もあるのだった。何故大きいはオウキイじゃなくてオオキイなの? と小学生に訊かれたら、どう答えるのか。小学生にもわかるように説明する自信はない。要するに、大きいは正仮名ではオホキイと書かれていた。新仮名遣いで言ふがイウになったように、オホキイはオオキイになった。或いは、昔はオホキイと発音していたけれど、何時の間にか子音が脱落して、オオキイと長音のように聞こえるようになった*5でも、正仮名と新仮名の区別から話をはじめたら、小学生は逃げ出してしまうかも知れない。