土堤内昭雄「観光立国に向けた異文化理解−訪日客「4000万人」時代に必要なこと」http://bylines.news.yahoo.co.jp/doteuchiakio/20161214-00065432/
土堤内氏は「ニッセイ基礎研究所」の研究員であるという。
「今年度の訪日外国人はすでに2000万人を超えた」ということを踏まえたテクスト。「訪日外国人は2013年に初めて1000万人を超え、わずか2年で倍増し、政府は2020年に4000万人という目標を掲げている」。また、「現在、年間外国人訪問者数が4000万人を超えている国は、フランス、アメリカ、スペイン、中国、イタリアの5か国だけだ」という。
それで、タイトルに掲げられた「異文化理解」だけど、どんな凄いことが論じられるのだろうかと、わくわく&どきどきしていた(ほんとうに)。でも、本文の中では「異文化理解」が言及されることは殆どないのだ。
これくらいだろうか。ここで引き合いに出されている「出国日本人数」の減少、海外留学の減少というのは、かなり前から(例えば)「若者の海外旅行離れ」という仕方で色々と論じられてきたことだろう*1。これには短期的な側面と長期的な側面があり、そのどちらが強いのかが重要になるだろう。短期的な側面とは為替相場。2012年以来「出国日本人数」が減少気味というのは円相場が円安に振れたことと関係があるのでは? 長期的な側面としては、遅くとも平成に入って以来は続いているという若者の洋楽離れ(J-POP化)や外国文学(翻訳小説)離れもその一環ということになるであろう文化的内向化*2の流れ。それが、政治的なチャージがかかった排外主義の擡頭やらグローバル化に対するルサンティマンやらによって、加速されているのかどうか。
これまでも多くの日本人が海外を訪れている。しかし、近年の出国日本人数は2012年の1849万人から毎年減少しており、2015年には1621万人と初めて訪日外国人旅行者数を下回った。日本からの海外留学生が減少している点も気がかりだ。今日の訪日外国人の増加は、これまで多くの日本人が外国へ出かけて異文化を体験・理解してきたことと無関係ではないからだ。
心にひびく“おもてなし”をするためには、欧米の先進国だけではなく、発展途上国や文化交流の少なかった国や地域の異文化に対する理解を深めることが重要だ。
また、日本にはたくさんの素晴らしい観光資源があるが、それらを海外へ伝えるために多くの日本人が海外へ出かけることも有効だ。アウトバウンドの国際化がインバウンドの国際化を受容・促進してきたからだろう。
ところで、「異文化理解」ということで重要なのは、「異文化」を「理解」するということも勿論だけど、自文化を異化する、自文化を「異文化」として「理解」することであろう。