或る翻訳の帰結?

篠原修司「iPhoneに「死にたい」と相談すると宗教団体『幸福の科学』へと誘導される問題(追記あり)」http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinoharashuji/20161113-00064389/


曰く、


iPhone音声認識アシスタント『Siri』に「死にたい」と相談すると、なぜか宗教団体『幸福の科学』の勧誘サイトへと誘導されてしまう問題が発見されました。

この問題は「死にたい」とSiriに喋りかけると「自殺防止」の検索キーワードで『Bing』の検索結果が案内され、その結果として幸福の科学による勧誘ページへと誘導してしまうというものです。

幸福の科学の勧誘ページでは、「ウツ」、「職場の人間関係」、「受験の失敗」などさまざまな悩みに対して「苦しみを乗り切るためのヒント」を提供していますが、いずれも最終的には創始者である大川隆法氏の著書や幸福の科学のラジオ番組へと誘導されます。

人工知能に対する通俗的な批判ってあるじゃないですか。この場合だったら、「死にたい」という「相談」に対して、練炭の通販サイトを提示してしまうとか。それを回避するために、「死にたい」を「自殺防止」と翻訳したわけだ。そこまではよかったものの、参照元検索エンジンがちょっと拙かったということ? 
篠原氏の「追記」から引用してみると、

SNSなどで「Bingの責任であってSiriは問題ないのではないか?」とのコメントを頂いていますが、Siri側が「死にたい」の検索キーワードに対して特別な対応を取った結果、宗教団体のサイトへと誘導してしまうことになっているのが問題だと考えています。

状況の説明としては次の通りです。

Siriに「死にたい」と喋りかける
Siriは「死にたい」ではなく、キーワードを「自殺防止」に変換して検索結果を表示する
そのキーワードはどの検索エンジンでも宗教団体が1位(位置情報によって異なる場合があります*1)。
「死にたい」そのままのキーワードの場合、YahooとGoogleは行政機関の相談窓口を案内している。Bingはそのまま。
検索結果の変更はSiriにはできないため、「死にたい」を「自殺防止」に変換する特別な対応を取っているのであれば、行政機関の窓口を案内するなどもう一歩踏み込んだ対応を取っても良いのではないか?

今さっき、search.yahoo.co.jpで、「自殺防止」を鍵言葉にして検索をかけてみたのだけど*2、トップに表示されるのは「あなたの気持ちを話してください」という厚生労働省の頁。次に「広告」として、「自殺回避・自立回復センター」*3が表示され、NPO厚生労働省があって、幸福の科学の『自殺防止サイト-あなたに贈る真理の言葉』*4は4番目。「幸福の科学」だということは隠されてはいないけれど、スクロールを重ねて、頁の下の方まで読まないと、「幸福の科学」だとは気がつかない。少なくとも、サーチ・エンジンでは「幸福の科学」という文字列は全然表示されない。普通のNPOのサイトだと思って、クリックする人がいても不思議ではない。このことの方が問題かも知れない。
See also


岡田有花*5「「死にたい」検索トップの「welq」の記事、DeNAが広告削除 「不適切」指摘受け」http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1610/26/news117.html
井指啓吾*6「無責任な医療情報、大量生産の闇 その記事、信頼できますか?」https://www.buzzfeed.com/keigoisashi/welq-01