- 作者: 伊藤公雄,牟田和恵
- 出版社/メーカー: 世界思想社
- 発売日: 1998/03
- メディア: 単行本
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中河伸俊*1「悩む――個人の悩みと社会問題」(in 伊藤公雄、牟田和恵編『ジェンダーで学ぶ社会学』*2、pp.126-141)からメモ;
私は、『自殺論』*3でデュルケームが示唆したのよりもっと強い意味で、あらゆる悩みは社会的だといいたい。悩みについて考えこんだり話したりするためには、まず、その悩みをあらわす言葉が必要だ。「太り気味の自分が嫌だ」「息子が悪い友だちとつきあっているようで心配だ」、あるいは「職場の上司が、食事やお酒にしつこく誘うので困っている」。こうした悩みごとの記述を読んだり聞いたりして、私たちがとりあえず「なるほど」と思えるのは、私たちが、肥満や男女のみかけのよしあし、青少年と非行、職場の上下関係と「セクハラ」といった事柄について、一種の常識を働かせることができるからである。こうした常識はおおむね、言葉を媒介にした意味とイメージの連鎖からなる。常識やその材料となる概念(言葉)は、私たちが個人個人で勝手にでっちあげたものではない。つまり、言葉は社会的なものだ。だから、言葉を通じてしか表現できない悩みも当然、社会的なものだといえる。(p.127)
- 作者: デュルケーム,宮島喬
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1985/09/10
- メディア: 文庫
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(前略)ある社会学者が、慢性痛(chronic pain)の患者のインタビュー調査をした。慢性痛とは、原因不明の痛みが長期間つづくという症候を指す言葉である。ある時期まで医学界は、こうした症候の存在を認めておらず、もちろん慢性痛という概念もなかった。慢性痛という言葉がなく、その症状についての医学的な知識がなかった時期には、その患者(正確にいえば後になって患者と診断された人)は、自分の痛みの症状を一貫性がある、理解可能なかたちで認識し、記述することができなかった(R. A. Hilbert, “The Acultural Dimensions ofChronic Pain: Flawed Reality Construction and the Problem of Meaning,” Social Problems 31, 1984)。悩みよりさらに個人的なものだとされる身体の痛みの場合さえ、それを認識し、他人にうまく説明するためには、社会的な概念やイメージのお世話にならなければならないのである。(pp.127-128)
*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070123/1169575048 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070704/1183540138 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070904/1188907461 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071108/1194509754 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20071115/1195092168 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080215/1203014298 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080224/1203844098 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081207/1228581254 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090629/1246267379 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110424/1303581555 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060110/1136887109 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100702/1278000699 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20101102/1288666257 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110709/1310151717 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111006/1317828846 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20121121/1353471904
*2:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160722/1469159771
*3:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070112/1168571361 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100917/1284736710 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120107/1325897887 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120620/1340214843