承前*1
乙武洋匡*2「日大アメフト部だけの問題ではない。「体育」と「スポーツ」は同じではない。」https://www.huffingtonpost.jp/hirotada-ototake/ototake-on-sports-pe_a_23443920/
曰く、
たしかに。ところで、ここで「スポーツ」に対置されている「体育」は英語では何というのか。「スポーツ」というか運動競技一般を指す言葉として、athleticsという言葉がある。また、学校の教科としての「体育」はgymnasticsという。狭い意味では、athleticsは陸上競技を指し、gymnasticsは体操に限定される。
日本では、「体育の日」「国民体育大会」など、本来、「スポーツ」と表現すべきところを安易に「体育」と置き換えてしまった歴史がある。おそらく、両者を同じような意味だと捉えてしまったのだのだろう。だが、そもそも軍隊における兵士錬成に原型を持つ「体育」と、余暇や娯楽といった言葉を語源に持つ「スポーツ」とはまったくの別物であるはずだ。前者は強制されることが多いのに対して、後者は自発的に楽しむもの。似た者同士というより、むしろ対照的でさえある。
自発的に楽しむ「スポーツ」ではあくまで選手が主役となり、指導者はそれをサポートする役回りとなる。その一方、「体育」において主導権を握るのはあくまで指導者であり、選手はその指示に従うことが原則とされる。それは隷属と言い換えてもいい。
日本の学生スポーツや部活動の多くは「スポーツ」を名乗っているが、そこで行われていることは真にスポーツと言えるのかどうか検証が必要であるように思う。その実は「体育」の域を出ていないという組織やチームも少なくないのではないだろうか。
「軍隊における兵士錬成」云々ということだと、数日前に読んでいた松田恵示「ボディ・ポリティクスの磁場」(『交叉する身体と遊び』、pp.39-55)に、初代文部大臣森有礼*3による「兵式体操」の導入が言及されていた(pp.46-47)。また、西洋(特に英国)における「スポーツ」の意味転換については、松井良明『近代スポーツの誕生』、西山哲郎「遊ぶ――スポーツがつくる「らしさ」」(in 伊藤公雄、牟田和恵編『ジェンダーで学ぶ社会学』*4、esp. pp.160-161)をここでもマークしておく*5。
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*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180515/1526402283 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180517/1526526344 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180518/1526605124 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180520/1526830731 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180521/1526870676 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180522/1526951457 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180523/1527042148 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180524/1527126099 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180524/1527139574 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180525/1527213239 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180525/1527235507 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180526/1527301904 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180527/1527395126 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180529/1527606338 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180530/1527650525 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180601/1527853486 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180602/1527961419 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180604/1528124480 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180607/1528386339 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180614/1528940243 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180618/1529341695 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180626/1529992292 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180629/1530289515
*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060909/1157773946 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060912/1158074582 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160330/1459343463 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160331/1459390045 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160415/1460685137 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160603/1464884753 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160623/1466692840 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160916/1473989840 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20170809/1502291499 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180203/1517673830 )http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180422/1524324795 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20180510/1525900096
*3:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080326/1206501344
*4:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160729/1469762992
*5:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160828/1472406439