「小説」だったの?

久しぶりの百田尚樹『殉愛』問題*1

『デイリースポーツ』の記事;


百田氏出廷「悪く書くつもりはなかった」 “大演説”に注意も

デイリースポーツ 3月2日(水)19時6分配信


 2014年1月に亡くなったタレント・やしきたかじんさん(享年64)の長女が、たかじんさんの闘病生活を取り上げた作家・百田尚樹氏の著書「殉愛」により名誉を傷つけられたとして、発行元の幻冬舎に出版差し止めなどを請求した訴訟の第9回口頭弁論が2日、東京地裁で開かれ、百田氏が証人として出廷した。「何それ?!」と声を荒らげたり、早口トークを注意される場面もあった。名誉毀損については「悪く書くつもりはなかった」と述べた。

 証人質問は主に、百田氏の取材が十分であったか、正当なものか、という点について原告側、被告側、裁判長から行われた。

 百田氏はたかじんさんの長女の取材をせず、「殉愛」でたかじんさんと長女との確執に触れたことは認めたが、確執そのものが「(本の)テーマではない」「晩年の孤独がテーマ」と強調。

 長女を取材しなかった理由として「たかじんさんが闘病していた2年間、見舞いに来なかった」「本当のことを言うのだろうかという思いがあった」ことなどを理由に挙げた。ただ、途中で「取材しなかった理由を言いましょうか」と息巻く百田氏を何度も原告側代理人が「いいです」「あなたの意見陳述の場じゃない」などと制止することが多々あった。

 「膨大なメモ、資料、関係者からも(たかじんさんとさくらさんが)どういう関係だったか聞いている」と執筆内容の情報源となっているさくらさんの証言が信用できると百田氏は主張した。また、さくらさんについて「遺産を盗むため(の結婚)だとネットの声もありますが、笑止と言わざるを得ません」と法廷でも“百田節”で持論を展開した。

 約2時間の予定に合わせるため、裁判長が「時間がもう半分ですけど」と百田氏の“大演説”で長引きそうな展開となり、被告側代理人にスムーズな進行を求める一幕も。結果として、2時間4分でほぼ予定通りに終了した。

 「少しゆっくり話してください」と要求されたり、「聞かれてないことは話さなくてもいいです」と何度も注意された百田氏。閉廷後はツイッターで「さすがに疲れたわ」「話し出したら止まらないんやもん、しゃあない」とぼやいていた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160302-00000083-dal-ent

法廷をアジテーションプロパガンダの場として活用するって、何だか一昔前の左翼みたいだな。それはそうとして、「本当のことを言うのだろうかという思いがあった」というけど、訊く前に「本当のこと」かどうかなんてわかりっこないじゃん。「本当のこと」かどうかは、後に裏を取ってから初めて確定するわけでしょ。百田式の真理基準っていうのは、自らの事前の期待やprejudice*2に一致しているかどうかということ?
少しコンパクトな時事通信の記事;

百田氏、名誉毀損を否定=たかじんさん本差し止め訴訟―東京地裁

時事通信 3月2日(水)18時22分配信


 2014年に亡くなったタレントやしきたかじんさんの闘病生活を記した小説「殉愛」について、長女が発行元の幻冬舎(東京)に出版差し止めなどを求めた訴訟で、著者の百田尚樹氏の証人尋問が2日、東京地裁(松村徹裁判長)であった。
 百田氏は「悪く書くつもりは全くなかった」と話し、長女の名誉を毀損(きそん)する意図を否定した。
 百田氏は「テレビ界の大スターが抱えた孤独がメーンテーマで、長女のことは必要最小限に絞った」と説明。直接取材せず一方的に悪く書かれたとする長女側の主張には「本当のことを言ってもらえるか疑問だった」と述べた。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160302-00000103-jij-soci

これは短いながら凄い記事だ。親百田であれ反百田であれ、これまでの争いをその前提から崩してしまう可能性がある。『殉愛』って「小説」なの? (仮令歴史小説であっても)小説の事実性を問うこと自体がナンセンスである*3