『毎日新聞』(11月15日号)に載った、養老孟司氏*1による佐藤恵子『ヘッケルと進化の夢』という本の書評から少しメモ。
きわめて養老的なオチということができるが、エルンスト・ヘッケル*2という名前は最近何故か気になっていたのだった。
私見だが、ヘッケルの「個体発生は系統発生を繰り返す」は、じつは情報に関する法則である。それは学者や研究者が論文を書くときのやり方に歴然と表れている。ある主題について、先行研究の結果を「要約して繰り返す」。その後に自分の成果を付け加えて「学問が進歩する」のである。こういう意見はほとんど冗談だと思われるだろうが、私はそう思っていない。思えば十九世紀のメンデル、ダーウィン、ヘッケルの法則はいずれも情報に関する経験則である。われわれは情報という言葉をごく日常的に使う。しかしその意味を真剣に考える機会は少ない。情報は意識、つまり脳が扱うものであることを考えれば、ヘッケルの法則と人間精神の発達が関連することは当然なのである。
*1:Mentiioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20050526 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060210/1139536917 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070130/1170170762
*2:See eg. https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%B1%E3%83%AB https://en.wikipedia.org/wiki/Ernst_Haeckel http://www.ucmp.berkeley.edu/history/haeckel.html