「そこまで」(多和田葉子)

実は『たかじんのそこまで言って委員会』という番組*1は視たことがないのだ。
関係あるかどうか知らないけれど、 多和田葉子『言葉と歩く日記』から引用;


文芸誌をぺらぺらめくっていたら登場人物が「何もそこまで言わなくてもいいだろう」とどなる場面があった。この言い方が懐かしい。ドイツ語ならなんと言うだろう。「その言葉によって、あなたは境界線を越えてしまった」だろうか。日本語の言い方には「境界線」が出てこない。「そこまで言う」の「そこまで」は、一体どこまでなのか。多様化した現代社会で、人にものを言う時に「ここまでは言っていい、ここからは駄目」という常識をわたしたちは本当に共有しているのか。
「そういう言い方はないでしょう」と言われたら言い方だけなおせばそれでいいようで気が楽だが、「それを言ったら身も蓋もないでしょう」と言われたら、言語は鍋の中の味噌汁のようなもので、身や蓋があるのかと思ってしまう。(p.32)
多和田さんは、やしきたかじんの番組をご存知なのだろうか。