ワーグナー(by 多和田葉子)

多和田葉子『言葉と歩く日記』*1からの抜き書き。


(前略)ワーグナーは自分でオペラの台本を書いたわけだが、彼の文体には時々、鳥肌が立つ。ぞっとしているのか感動しているのか自分でも分からない。偽古代ゲルマン文体と呼びたくなるような人工的な文体。崇高なる古代を無理にでもこね上げたいと激しく欲する自分自身に対して、作者がちょっとでも距離をおいているなら、現代文学として読むことができるが、そうではない。現代文学というと随分新しいことを言っているように聞こえるかもしれないが、わたしの言いたいのは『ドン・キホーテ*2以降の文学のことである。すでにセルバンテスが騎士物語というジャンルに対してメタのレベルで挑戦しているのに、ワーグナーが大まじめに騎士物語を書いていることへの驚きを感じる。(p.205)
ドン・キホーテ〈前篇 1〉 (ちくま文庫)

ドン・キホーテ〈前篇 1〉 (ちくま文庫)

ドン・キホーテ 前篇(2) (ちくま文庫)

ドン・キホーテ 前篇(2) (ちくま文庫)

ドン・キホーテ 後篇(1) (ちくま文庫)

ドン・キホーテ 後篇(1) (ちくま文庫)

ドン・キホーテ 後篇(2) (ちくま文庫)

ドン・キホーテ 後篇(2) (ちくま文庫)

リヒャルト・ワグナーについては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070125/1169737627 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070826/1188154111 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100324/1269399406 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100325/1269541570 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100412/1271048154 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100927/1285557411 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130720/1374340006で言及している。