「待合室」(メモ)

多和田葉子『尼僧とキューピッドの弓』*1から。


この日のお説教には「天の待合室」という題がついていて、ユダヤ教徒と基督教徒とイスラム教徒の代表が一人ずつ、神様の家に呼び出され、待合室で待たされる話だった。神様の家には、歯医者さんのように待合室があるらしかった。誰が最初に呼ばれるのだろうかと考えただけで、三人とも気持ちがおちつかない。いらいらしながら黙って待ち続けた。もう待ちきれなくなって三人とも家に帰ろうかと思った瞬間、神様が三人を同時に呼び入れた。同時に呼ばれたことにがっかりして三人が入っていくと、神様は三人に「待っている間、何をしていたか」と訊いた。三人が「何もしないで黙って待っていた」と答えると、神様は「なぜお互いに話をしなかったのか」と言って怒ったという。(p.166)