『毎日』の記事;
そもそも半数近くの私立大学は定員割れに苦しんでいるので、そういうところにとっては、「財政を直撃するだけに深刻だ」という「関西圏の大規模私大」関係者の嘆きは全くの他人事ということになるのだろうか。正規雇用の労働者がボーナスが減る! と言ったら、フリーターが俺らにはそもそもボーナスなんてねぇよ! と返すように。
3大都市圏:私大の学生数抑制へ 文科省、定員超過厳格化毎日新聞 2015年02月22日 21時47分(最終更新 02月23日 02時02分)
文部科学省は、首都圏など大都市部にある私立大学の学生数を抑制する方針を決めた。入学定員を超えた入学者の割合(定員超過率)を厳しくする。現在、定員8000人以上の大規模大学の場合、定員の120%以上なら私学助成金を交付しないが、これを110〜107%まで減らす方針だ。大都市への学生集中を抑制し、地方からの学生流出に歯止めをかける「地方創生」の一環。定員8000人未満の私立大も、現行の130%から120%へ引き下げる。私立大は授業料収入減につながりかねず、反発も予想される。【三木陽介、坂口雄亮、澤圭一郎】
対象となるのは、首都圏(東京都、埼玉、千葉、神奈川)▽関西圏(京都、大阪、兵庫)▽中部圏(愛知県)の私立大。2014年度の私大入学者は、首都圏20万4287人▽関西圏7万6677人▽中部圏2万9206人。この3大都市圏で計約31万人に上り、全私立大の入学者の65%、国公私立合わせた入学者のおよそ半数を占める。
このうち入学定員を超過した人数は、3大都市圏で計約3万3000人。規模別では定員1000人以上の大学に集中している。私立大側は財政を安定させるためにもできるだけ学生を受け入れたいのが本音で「定員超過している大学は基準ぎりぎりまで学生を取っている」(大学関係者)のが現状という。
日本私立学校振興・共済事業団によると、定員の110%以上の学生がいる大学は全国で約170校あるという。文科省の調べでは、3大都市圏で定員の110%以上の学生数は約2万6000人で、新基準が適用されると、現在の超過人数の多くが不交付対象になるとみられる。
文科省の方針について、関西圏の大規模私大の担当者は「財政を直撃するだけに深刻だ」と話す。大学財政の根幹は学費収入だ。
一方、東北地方の私立大幹部は「定員割れしている地方大には一定の効果はある。学生は増えるのではないか」と見る。四国の私立大関係者も「ありがたい話」と歓迎。ただ「それで受験生が地方大を向くかというと、そう単純な話でもないと思う」とも指摘する。
政府の地方創生総合戦略は今後、大都市圏への集中を解消し、地方の学生が自分の住む県の大学に進学する割合を2020年までに36%(13年度は33%)に引き上げる目標を掲げる。国立大の定員超過率も現行の110%から引き下げを検討する。
http://mainichi.jp/select/news/20150223k0000m040083000c.html
昨年の10月に、『朝日』が、都道府県別の大学進学率のトップとボトムの格差は最近20年間で2倍になっており、1位の東京都と最下位の鹿児島県の差は40ポイント以上開いているという報道を行った*1。進学率格差の要因は経済的なものであり、特に都会に下宿させるのは経済的にきついけれど、自宅から通学できる範囲に大学が少ないということが重要だった。であれば、文部科学省の今回の施策は地方の進学率を直接上昇させることにはならないだろう。「定員超過」が厳しくなる都会に近い大学は一方では(実質的な競争率が上がるので)難易度が高くなる。或いは、学費を上げることで対処する大学もあるかも知れない。そうすると、学力的な理由若しくは経済的な理由によって、大都市圏の進学率は下がる。そうすれば、上がへこむことによって、地域間の格差は一応緩和されるということになる。都会に近い大学を 学力的な理由若しくは経済的な理由によって締め出された人たちが地方の大学に向かうのかどうかはわからない。大都市圏における高い進学率の背景には(田舎とは反対に)自宅から通学できる範囲に大学が多いということがあるわけだ。地方の大学だと、都会の坊っちゃん・嬢ちゃんは下宿先を見つけるということに直面する。勿論、田舎の不動産は安いということはあるのだろうけど。
「講義は中学レベル、入試は同意で合格 “仰天”大学に文科省ダメ出し」http://withnews.jp/article/f0150221001qq000000000000000G0010401qq000011552A
曰く、
大学は、「定員割れ」でも「定員超過」でも文句を言われるのだった。
文科省は今月19日、講義内容や運営方法などに不備があるとして、改善を求める大学253校を公表しました。新設された大学や学部を昨年度から調べており、対象となった502校の約半数に問題が。多くは学生の定員割れや、教職員の高齢化などでしたが、大学としての“適格性”が問われそうなものも少なくありませんでした。千葉科学大(千葉県銚子市)は、一部の講義で“レベルの低さ”が問題視されました。たとえば「英語?」の講義。同大のシラバス(講義計画)によると、冒頭から「be動詞」「過去形」「進行形」と、中学校レベルの内容が並びます。「基礎数学」の講義でも、割合(百分率)や小数、四捨五入とは何か、から教え始めます。
つくば国際大(茨城県土浦市)でも、「化学」の講義が元素や周期表の説明から始まったり、「生物学」では光合成やメンデルの遺伝法則を一から学ばせたり。
こうした実態について文科省の調査は「大学教育水準とは見受けられない」と指摘しており、改善を求めています。
*1:岡雄一郎「大学進学率の地域差、20年で2倍 大都市集中で二極化」http://www.asahi.com/articles/ASGBG5HCKGBGUTIL03K.html Cited in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141017/1413481118