承前*1
碓井真史*2「小保方晴子氏STAP論文問題:彼女はなぜ嘘をつき続けるのか:心の闇と論文ねつ造」http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20141220-00041671/
「女はなぜ嘘をつき続けるのか」。わかりません。それよりも、「嘘」ということを巡る心理学的、さらには哲学的な考察が足りないように思う。また、彼女は(主観的な意味で)「嘘」をついているのだろうか。現在いえることは、客観的な意味でSTAP細胞が虚偽である可能性が限りなく高くなっているということだが、小保方晴子にとって、STAP細胞の実在はまだ真実なのか、それとも彼女自身にとっても、その信憑性は限りなく薄いものなのか。後者の場合、
小保方晴子は嘘をついている
ということはたしかに言える。しかし、前者の場合だったら、いくら客観的には虚偽であっても、彼女が「嘘」をついているとはいえないのでは? 例えば、ポリグラフにかけても、そのまま通ってしまうのではないか*3。私が知りたいのはそっちの方なのだ。そして、実験結果にも拘わらず、どんな推論上の逃げ道を彼女は次の一手として打つのか。例えば、STAP細胞はとてもシャイなので、「監視カメラ」があると恥ずかしがって出現しない、とか(嘘)。
ところで、小保方の退職のコメントには、碓井氏が指摘するように、STAP細胞の実在問題への言及はない。自分が「未熟」なのでもう勘弁して下さいというばかり。彼女(或いはその背後にいるだろう弁護士=代理人)は何処に落とし処を見つけるつもりなのだろうか。STAP細胞の実在には全く否定的な実験結果を前にして、STAP細胞が実在すると信じていましたがやっぱり勘違いだったということがわかりました、ごめんなさい、と謝ってしまえば、彼女はたんなるおっちょこちょいということになって、嘘つき、悪人という烙印から自らを守ることができただろう*4。勿論、世間が阿呆と悪人のどちらを罪深いと見做すかという問題はあるのだろうが、このまま行けば嘘つき、悪人という烙印を身体深く刻み込まれてしまう危険はますます増大する。 それから、嘘つきという烙印を捺されてしまうと、〈クレタ人問題〉というか論理的なパラドクスを誘発するということはあるけど。嘘つきが嘘だと告白したが、これは真実や否や?
さて、STAP細胞のアイディア自体は小保方晴子のオリジナルではなく、そもそも大和雅之とチャールズ・ヴァカンティのものだという。嘘であれ勘違いであれ、STAP細胞の実在を否定してしまうのは2人の恩師のアイディアを否定してしまうことになるので、自らの一存では決められないという縛りがあるのでは? と、無根拠に推論してしまう。
それから、「超伝導」に関する実験捏造事件のヤン・ヘンドリック・シェーンもいまだに捏造を認めず、自らの研究の真理性を信じているんだね;
碓井真史「論文捏造:STAP細胞論文から考える科学と私たちが抱える根本的問題:ヘンドリック・シェーン事件から」http://bylines.news.yahoo.co.jp/usuimafumi/20140402-00034144/
*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140315/1394904519 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140318/1395108929 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140613/1402655450 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140629/1404056302 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140630/1404104626 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140701/1404181587 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140706/1404668892 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140714/1405306381 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140718/1405614505 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140719/1405733823 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140724/1406217056 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140801/1406824871 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140802/1406943404 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140805/1407234173 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140808/1407425853 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140809/1407591494 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140810/1407636145 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140811/1407771956 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140813/1407860802 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140819/1408461044 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140822/1408678417 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140827/1409149926 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140828/140919914 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140903/1409682036 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140907/1410063860 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140913/1410625851 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140914/1410659469 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140915/1410749257 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141008/1412732195 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141017/1413517431 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141114/1415970524 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141128/1417173694 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141218/1418877881 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141220/1419089121
*2:http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/ See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111117/1321556427 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130430/1367292444 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140723/1406132452 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140802/1406940639 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141006/1412597478 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20141025/1414208459
*3:所謂「デマ」と「流言」の差異についての議論も参照のこと。See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110414/1302780017
*4:さらに、これは「懲戒」問題にも関係する。悪人を「懲戒」することはできるが、阿呆を「懲戒」することはできない。