大学生文化ってあるの?

山内太地「学園祭の衰退について」http://blogos.com/article/96760/


近頃の大学の学園祭が面白くないという話。
曰く、


どうして高校の文化祭が盛り上がるのかというと、全員参加だからです。大学ではサークルだけが参加するので、多くの学生には学園祭は長期休暇でしかありません。サークルに入る学生も減少し、どんどん学園祭は内容がつまらなくなってきています。首都圏の学園祭は全部行きましたが、そう思います。

学生運動を一掃し、大学のお墨付きを得て復活した学園祭は、「大学生のキャンパスライフって楽しいでしょ?」と大学が高校生に見せる、オープンキャンパスと同じような行事になってしまいました。にもかかわらずそこには、学生による自主的な学術研究の色は、大きく消えてしまっていたのです。

受験生が殺到する有名大学の学園祭の中には、驚くほど文化系サークルやゼミの学術的な研究発表が存在しない模擬店祭、たこ焼き祭が存在します。模擬店やイベント系が悪いとはいいませんが、それしかないのが問題なのです。皆さんは大学で勉強をしているはずでしょう。それを見せてください。

学園祭の劣化、「模擬店祭」化、「たこ焼き祭」化というのは俺が大学に入る以前から、すなわち1970年代から既に嘆かれていた。
さて、「サークルに入る学生も減少し」というのは大学生一般の〈窮乏化〉の効果なのだろう*1。さらに問題は、大学生文化というのが存在するのかどうかということになるのではないかと思う。「模擬店」をやるにしても、さすがはXX大学だね! といわれるようなセンスとか意外性とかがあるかどうかということ。「イベント系」の場合はそれがもっと明瞭に顕れるだろう。コンサートでどんなミュージシャンを呼ぶのか、どんな映画を上映するのか、講演会(トーク・ショーという方が今風か)でどんなパネリストが登壇するのか。こういうことどもは企画した人の個性の顕在化であるとともに、そこにおいて、その人(その人の属する集団)の有する文化資本が問われるわけだ。さらには、もっと一般化されて、それ以外の市井人とは区別された大学生としてのセンスとか教養とかも。東京や京都などの大都市圏では大学進学率は6割を超えている*2。このような大学進学者が(統計的な意味で)マジョリティになってしまった社会において、大学生というサブカルチャーが主流の文化に対して有する意味は昔と同じではあり得ない。大学の学園祭がつまらなくなったという(1970年代から既に存在する)嘆きは、大学生文化が文化一般に同化されて、対抗文化として機能しなくなったということに基因しているのではないかと思う。