承前*1

- 作者: 白井恭弘
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/09/19
- メディア: 新書
- 購入: 73人 クリック: 963回
- この商品を含むブログ (95件) を見る
白井恭弘『外国語学習の科学』から。
何故非ネイティヴは「文法的にはなんの問題も」ないけれど「非常に奇妙な」文を作ってしまうのか。白井氏は「文法規則」が「すべてに一〇〇パーセント適用できるわけはな」いこと(p.88)、つまり「言語はルールでは割り切れない」こと(p.91)に注意を喚起し*2、「慣用句とか熟語、イディオムと呼ばれる表現」(p.88)を採り上げる。例えば、hold one's horses(「はやる気持ちを押さえる」)という句(p.89)。これは過去形では使えない。「文法」によってこのことを説明することはできないけど、英語のネイティヴにとって、He held his horses.という文は不自然きわまりない。何故駄目なのか説明してみろと問い詰められても困るけれど、とにかく駄目なものは駄目、ということになる。ネイティヴのこうした共通感覚(常識)を共有するように努めるということが肝要だということになる。
共通感覚ということと関係あるのだろうか。さらに後の箇所で、「予測文法」というのが紹介されている(p.136)*3。 「英語がある程度できるようになった人は、John gave me...と聞いたら、次に何がくるかは、無意識のうちに瞬時に予測することができます」。ネット検索とかで使われるsuggestion機能みたいなもの? Brian Christian氏がsuggestion機能のことを文学の敵として言及しているのだが(The Most Human Human*4, pp.247-250)、今それに詳しく関わる余裕はない。

The Most Human Human: What Artificial Intelligence Teaches Us About Being Alive
- 作者: Brian Christian
- 出版社/メーカー: Penguin
- 発売日: 2012/06/07
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140924/1411529143
*2:ここでいう「ルール」というのはかなり狭い意味での「ルール」。或いは、狭義の「文法」よりも語用論的ルール、修辞学的ルールの方が重要だということかも知れない。
*3:See J. W. Oller Jr. “Some working idieas for language teaching” in J. Oller & P. Richard-Amato (eds.) Methods that work: A smorgusbord of ideas for language teachers, Newburry House, 1983
*4:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140704/1404438131 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20140823/1408757996