天狗騒動

承前*1

8月に埼玉県で天狗もといデング熱の国内感染が70年ぶりに確認され、蚊に刺され感染した場所が代々木公園であることが突き止められて以来、代々木公園の閉鎖など、ちょっとした大騒ぎになっている。
その大騒ぎを変に思った人も当然いるわけで、「デング熱報道で隠したかったものとは?」というblogエントリーを書いた人がいる*2。この内容は勿論アレというかトンデモで、今年のデング熱感染者は昨年(2013年)よりも少ないのに何故騒いでいるのかと訝しみ、原発関連の陰謀理論と結び付けるというもので、まあ真面目に論ずるには端っから値しないものである。これに対して、データ誤読を指摘したエントリーがある*3。その言っていることは正しいのだが、そのバカを叱ってやったぜ! というエラそうな上から目線モードには不快感がある。データ誤読に気づかずに変な陰謀理論を拡散せんとする奴、そういう馬鹿をしたり顔で説教する〈優等生〉君、どちらも蚊に刺されて、デング熱で死んでしまえ! と一瞬は思ったのだ*4
70年ぶりのデング熱の国内感染。これはマクロな準位においては、例えば地球温暖化とかグローバル化といった論点と関連するのだろう。とはいっても、代々木公園を封鎖したりとか、ちょっと騒ぎすぎなんじゃないか。Wikipediaから引用してみる;


デング熱にかかった人は、ほとんどの場合、問題なく順調に回復する。治療せずに死亡に至る割合は1 - 5%で、適切な治療を行えば、その割合は1%を下回る。しかし、重症例における死亡率は26%に及ぶ。デング熱は、110か国以上で風土病となっている。世界中で毎年5,000万から1億人が感染していて、そのうち約50万人が入院し、およそ12,500 – 25,000人が死亡している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%86%B1
年間世界で1億人が感染し、そのうち死ぬのは25,000人。死亡率は0.0025%だよ。今回、感染した人は9月11日現在で100人を超えたということだが*5、私の知る限り、死亡した人はおろか入院した人もいない。デング熱の感染を予防することは代々木公園を閉鎖することによる社会的な不利益に見合ったことなのだろうか。「日本産科婦人科学会」は、デング熱に関して、免疫力の低下している妊婦に注意を呼びかけているという(ibid.)。公園の閉鎖などという大袈裟な措置ではなく、ただこのように高リスクのカテゴリーの人は公園を避けるというだけでいいのでは? デング熱でこの騒ぎだと、エボラ出血熱が日本にやってきたら、(反革命も含む)革命が起きるのではないか。
デング熱のワクチンは今のところないという。何故ないのか。素人の暴論を展開してみる。一般にワクチンというか予防注射に危険がないわけではない。世の中には、この危険を過大に強調し、さらには怪しげな陰謀理論と結び付けたりして予防注射に反対する人がいるわけだけれど、世間でワクチンというのが基本的に承認されているのは、ワクチンの危険性よりも病気(例えばインフルエンザなど)のリスクの方が怖いと思われているからだ。「安全性」というのはそのように、複数の危険を天秤に懸けて算出されたものにすぎないわけだ(cf. 武谷三男『安全性の考え方』*6、『原子力発電』)。デング熱に話を戻せば、ワクチンの開発が進まないのは、そもそもデング熱の危険が高いものではないので、ワクチンの危険の方が目立ってしまうということがあるのではないか。
原子力発電 (岩波新書 青版 955)

原子力発電 (岩波新書 青版 955)

さて、こういうテクストもある;


水島宏明*7「「デング熱」蚊の拡大で心配される「ホームレス差別」の広がり」http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140906-00038876/


「ホームレス差別」というのは以前からあったわけだが、それが「デング熱」と結びつくのは、「代々木公園」というロケーションもあるけれど、そもそも「デング熱」について必要以上に大袈裟に騒ぐということが関係しているだろう。つまり、〈天狗騒動〉がみんな悪い! ということになる。

ところで、


2014-09-11 15:40
有毒のセアカゴケグモ60匹 山陽道・福山SAで見つかる


 広島県福山市の山陽自動車道・福山サービスエリアで10日、強い毒性を持つ「セアカゴケグモ」が60匹見つかった。利用者から通報があり、市がNEXCO西日本の協力を得て敷地内を点検したところ、通報があった売店近くだけではなく上り線・下り線の広範囲でセアカゴケグモが見つかり、同日にすべて駆除した。


 セアカゴケグモは、メスが体長1センチほどで、外見は艶のある黒色で背中には赤色のひし形が縦に並んでいる。メスは強い毒を持つが、オスは毒を持たない。


 噛まれると、激しい痛みととももに、めまいや嘔吐のほか、呼吸困難などの全身症状が現れることもある。いまのところ、住民に健康被害は出ていない。福山市は、ホームページなどを通じて「見つけた場合には素手では触らないように」と呼びかけている。
http://www.hazardlab.jp/know/topics/detail/7/2/7264.html

こっちの方が怖いぞ! しかし「福山サービスエリア」を封鎖しろという議論は出ていないようだ。