バナナ/レイシズム(メモ)

『読売』の記事;


横浜Mサポーター、バナナ振り人種差別的行為
2014年08月24日 07時38分


 23日に横浜市ニッパツ三ツ沢球技場で行われたJ1リーグ戦・横浜F・マリノス(横浜M)―川崎フロンターレ戦で、客席の横浜Mサポーターが川崎の選手に向け、人種差別の意味があるバナナを振っていたことが分かった。

 横浜Mは「限りなく人種差別と疑われる行為」として、このサポーターを無期限の入場禁止とする処分を決めた。

 サッカー界では、バナナは相手を猿に見立てるものとされ、今年4月にはスペイン1部リーグでブラジル代表選手にバナナが投げつけられる騒動があった。

 横浜Mによると、サポーターは10代後半の男性で、42分頃、手にしたバナナを振っている中継映像が流れた。横浜Mが試合後、この男性に事情を聞いたところ、「特定の選手に向けたものではないが、挑発行為だった。大変申し訳ない」と話したという。横浜Mは、Jリーグ事務局などと今後の対応を協議していく方針。
http://www.yomiuri.co.jp/sports/soccer/domestic/20140824-OYT1T50000.html


差別的挑発問題、横浜M社長がJリーグに報告
2014年08月25日 17時35分


 J1横浜Mのサポーターが対戦相手の選手にバナナを振って差別的な挑発行為をした問題で、横浜Mの嘉悦朗社長は25日午前、都内のJリーグ事務局を訪ね、村井満チェアマンに経緯を報告した。

 Jリーグは近く裁定委員会を開き、横浜Mへの制裁を決める。

 報告は約1時間、非公開で行われた。村井チェアマンは面会後、制裁について「社会の厳しい目や、サッカー界全体で管理態勢が強まっている事情も考慮する」と言及。嘉悦社長は、選手による啓発メッセージやホームページでの情報発信などで再発防止を図る方針を明らかにした。
http://www.yomiuri.co.jp/sports/soccer/domestic/20140825-OYT1T50083.html

そうだったんだ。このハイティーンのサポーターは、「挑発行為」であると認識していたということは、「バナナ」の意味、そのレイシズムとの関係についても知っていたわけだ。
今年4月の西班牙での事件については、取り敢えず、


Reuters “Villarreal fined €12,000 for banana thrown at Barcelona's Dani Alves” http://www.theguardian.com/football/2014/may/07/dani-alves-villarreal-barcelona-racism-banana
Alex Richards “Villarreal fined just £10,000 after fan threw banana at Dani Alves as Man City face £50m penalty for FFP breach” http://www.mirror.co.uk/sport/football/news/racism-football-villarreal-handed-12000-3507938
James Rush “Revealed: How Barcelona players PLANNED banana-eating riposte in advance - as fruit-throwing fan is arrested” http://www.dailymail.co.uk/news/article-2616673/Football-fan-accused-throwing-banana-Dani-Alves-arrested-Spain-inciting-hatred.html


をマークしておく。
西班牙でバナナを投げた男は警察にすぐさま逮捕され、有罪となれば懲役3年をくらう可能性があるという。
サッカーにおけるレイシズムというと、2006年のワールド・カップで挑発されたジダンを想起するのだが*1、「バナナ」が関係しているのはさらに古典的なレイシズムである黒人差別。「猿」との結び付きということだけど、勿論動物園などで人間に飼われている猿がバナナを与えられているということは知ってはいるが、はたして野生の猿がみんなバナナを食べているのだろうか。何が言いたいのかといえば、このバナナと猿との連合関係というのは、ヨーロッパには野生種の猿がおらずヨーロッパ人は基本的に猿を知らないということと関係があるのかということである。亜細亜において「バナナ」は全く別の侮蔑的意味を持つということはあるのだが、かつては自称〈文明人〉を挑発するという意味を持っていたこともあったのだ。1925年にジョセフィン・ベイカーは「裸同然の――実際には大きな首飾りとバナナの腰巻とダチョウの羽根を身にまとった――格好で、当時の流行だった「チャールストン」を、パリの名士たちの前で踊った」(昼間賢「全体的な芸術は社会事象である――民族音楽学者シェフネル」 in モース研究会『マルセル・モースの世界』*2、p.229)*3

マルセル・モースの世界 (平凡社新書)

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