「皖公」

タイトルに「(笑)」を加えるべきかどうか。

「安徽貧困県建30米高”皖公”像」『東方早報』2011年11月17日


安徽省の「国家級貧困県」である「潜山県」が600万元を投じて、高さ19メートル(台座を含めると28.8メートル)の巨大な「皖公」の石像を建立した。この「皖公」は(よくある孔子像のように)春秋時代風のファッションを身に纏っているのだが、像の周辺にも「皖公」とは誰かという説明はなく、地元政府関係者は安徽省の「開山鼻祖」であると説明しているものの、中国では「皖公」っていったい誰? という話題で盛り上がっている。なお、 潜山県では「皖公」像一帯の69619平方メートルを公園として整備する予定で、総投資額は1000万元を超えるという。
さて「安徽潜山斥资600万建30米高“皖公”雕像(图)」*1という記事によると、清朝康煕60年に当時の安慶知府、張凱が書いた『安慶府志』に「大夫皖伯、史逸其姓氏、称為周大夫云、周封大夫於皖、而皖之名始著」という記述があるという。また『百度百科』の方を参照すると*2春秋時代の前期に現在の潜山の辺りに「皖」という国があったが、その国の君主の姓氏は伝わっておらず、「皖伯」とか「皖公」と呼ばれていた。安徽省を今でも「皖」と称するのはこの「皖国」の存在に由来するので、その意味では「皖公」が安徽省の「開山鼻祖」であるというのは正しいのだが、「皖公」というのは固有名詞ではなく、たんに皖国の君主を意味する普通名詞にすぎないわけだ。
河南省の「黄河女児」も最近話題になっているが*3、最近中国各地に出現している巨大人物像というのは日本のバブル時代に出現した〈大仏〉とかと比較すべきか*4
因みに、「皖」という字は「明媚」を意味し、原義は(文字通り)「白」+「完」、すなわち純白である。